電気伝導性を有する合成樹脂をいう。導電性樹脂はその体積固有抵抗で分けると,表のようになり,基本的には次の二つに大別することができる。(1)本来絶縁性の合成樹脂に,実用上の問題から,静電気除去作用,摩擦による帯電の防止を目的として,ある程度の導電性をもたせたもの。カーペットの帯電防止,ほこりを嫌う集積回路製造工場などでの静電気除去,紡績用や印刷用ロールの帯電防止,発火性危険物取扱用の衣服などに用いられる。(2)本来絶縁性の合成樹脂に導電性を積極的にもたせたもの。面状シートに導電性をもたせ発熱体として使用するとか,熱を加えるか圧力を加えると導電性が消えるか現れるようにして,スイッチング材料や温度コントローラー(サーミスター)として用いられる。電子機器を外部の電場から保護するためのシールド材料にも用いられる。電子機器の接続に用いられる導電性接着剤,ペースト,インキも高導電性である。さらに将来の方向として,合成樹脂自体を導電性にして,銅やアルミニウムの電線の代りをさせようという研究も行われている。
導電性樹脂の製法は,樹脂に導電性材料(たとえば表面活性剤,炭素,銀など)を加えてつくる方法と,合成樹脂自体を導電化する方法の二つに大別される。前者には,合成樹脂の内部に導電材料を分散させる場合と,合成樹脂(とくにフィルム状のもの)の表面に導電材料を塗布あるいはデポジットさせる積層型がある。以下で,若干の例をあげて説明する。
(1)ゴムにカーボンブラックを分散させ,通常の状態では分離しているが,圧力をかけると粒子間が接近し,導電性を示すようにすることができる。PCR(pressure sensitive conductive rubberの略)といわれる。圧力が一定の値に達すると急激に抵抗が低下する(図1)。スイッチ,タッチセンサー,入力用ボードとして,興味ある材料である。
(2)同様にポリエチレン,ナイロンのような樹脂に炭素を混合すると,その樹脂のガラス転移点付近で,抵抗が大幅に変化し,常温では導体であったものが,加熱時には絶縁体となる(サーミスター特性。図2)。電気毛布や電気カーペット用ヒーターの温度コントローラーに用いられる。さらに多量のカーボンブラックをシート状の樹脂に含有させ,電気を通すとその抵抗で発熱するようにもできる。いわゆる面状発熱体といわれ,暖房,融雪,均一加熱装置に実用化されている。
(3)ポリエステルフィルムの上に,スパッタリングまたは化学蒸着といわれる方法で,金属あるいは半導体をデポジットさせると,透明で表面のみに導電性があるフィルムが得られる。酸化インジウム,金,白金などを蒸着して,102~109Ωの抵抗をもち,かつ透明なフィルムが得られるので,デフロスター用透明面状発熱体,光メモリーまたは太陽電池用,液晶またはエレクトロクロミックディスプレー用などに用いられる。また,このフィルムを基板として,その上に光導電性材料(たとえばポリビニルカルバゾール)を塗布し,電子写真記録用フィルムにも実用化されている。
(4)高分子自体に導電性をもたせる方法として,ポリエチレングリコールのような吸湿性高分子を樹脂中に混合あるいは共重合し,帯電防止性,制電性をもたせる方法がある。さらに近年になって,長い共役系をもつ高分子,たとえばポリアセチレンの導電性が検討された。
この高分子自体の電気伝導度は10⁻4Ω⁻1cm⁻1程度で絶縁体に近いが,この高分子にヨウ素I2や五フッ化ヒ素AsF5を吸収させると102Ω⁻1cm⁻1にまで導電性が上がることが見いだされた。現在,この半導体特性を利用して,太陽電池や有機電極として開発が進められている。また,有機化合物のテトラメチルテトラセレノフルバレンとフッ化リンとの錯体が1980年に低温・加圧下で超伝(電)導を示すことが発見され,このようなモノマー錯体系での超伝導を高分子系でも見いだし,高効率電線やコンピューター用に使う試みが世界各国で行われている。
執筆者:森川 正信
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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