ミトコンドリア,葉緑体やゴルジ体などと同じく細胞内にある膜様構造体で,ポーターK.Porterが1945年に発見・命名した。ERとも略記する。小胞体の膜構造はタンパク質と脂質からできていて層板状になっているものが多い。ラット肝細胞の中の膜構造分画のうち,小胞体膜は51%とその半分を占め,次に多いのがミトコンドリア33%,細胞膜7%である。タンパク質合成を行うリボソーム(径約15nm)が付着した小胞体を粗面小胞体,リボソームが付かないものを滑面小胞体という。電子顕微鏡像で前者は粒状のものが小胞体について見え後者は見えない。小胞体の一般的な機能は物質輸送である。粗面小胞体は核膜と連続しているときが多く,粗面小胞体上のリボソームで作られたタンパク質の分泌物質は滑面小胞体に入り,細胞内に縦横に散在する小胞体(ゴルジ体を含めて)を通って細胞外に分泌される。筋肉細胞の小胞体は特殊に分化した滑面小胞体で,筋小胞体sarcoplasmic reticulumと呼ばれ,Ca2⁺の細胞質への放出,取込みで筋の収縮,弛緩の調節を行っている。
→細胞
執筆者:武田 文和
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一重膜で包まれ、袋の形をした膜状構造で、形や大きさは一定せず、ほとんどすべての細胞質内に存在する。小胞体の表面にリボ核タンパク粒子であるリボゾームが付着しているものを粗面小胞体とよび、リボゾームが付着していないものを滑面小胞体とよぶ。粗面小胞体はタンパク合成の場で、分泌機能をもつ細胞に多く含まれる。光学顕微鏡でいうエルガストプラズマは粗面小胞体の集塊に相当する。核DNA(デオキシリボ核酸)の情報を受け取った伝令RNA(リボ核酸)は粗面小胞体のリボゾームに付着し、転移RNAは情報に従って細胞質からアミノ酸を運ぶ。このアミノ酸を材料として、粗面小胞体はその細胞に特有なタンパクを合成する。一方、滑面小胞体は、分岐、吻合(ふんごう)した管状を呈し、この中には機能に応じて必要な酵素が局在している。それらの酵素は、肝の解糖と解毒、性腺(せいせん)や副腎(ふくじん)のステロイドホルモン合成、胃腺の塩酸分泌、横紋筋のカルシウムの取り込みと放出などの働きに関係がある。
[小林靖夫]
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…また,真核細胞の著しい特徴は,細胞質の各種代謝機能が細胞質の部分構造と結びついて細胞小器官となり,分業化によって効率的に行われていることである。細胞小器官としてミトコンドリア,小胞体膜系と各種小胞ゴルジ体などがあり,植物細胞には葉緑体や色素体,また,しばしば大きな液胞が発達していることなどは,原核細胞との大きな相違である。この相違は,真核細胞の起源を問題にするとき,説明されなければならない。…
※「小胞体」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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