小謡(読み)コウタイ

デジタル大辞泉 「小謡」の意味・読み・例文・類語

こ‐うたい〔‐うたひ〕【小謡】

謡曲中の短い一節を、謡うために特に抜き出したもの。祝賀送別追善宴席余興など、場に応じたものを謡う。

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精選版 日本国語大辞典 「小謡」の意味・読み・例文・類語

こ‐うたい ‥うたひ【小謡】

〘名〙 謡曲の中から、特に謡うことを目的として選んだ一段。独吟に適する謡いどころで、文章、節付けもよく、短くまとまったものが多い。酒席の余興、祝賀、送別など、場面や場合に応じたものが謡われる。「高砂」の「四海波」など。肴謡(さかなうたい)
申楽談儀(1430)音曲心根あなたを序になして、小うたひなど云ひをさめたらば」

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「小謡」の意味・わかりやすい解説

小謡
こうたい

能の用語。謡曲のなかから独吟に適するようなごく短い一節を取り出したもの。小謡用の箇所は指定されているのが普通である。節付けの細かい、叙景叙情を内容とする「上歌(あげうた)」が多く、内容やうたう場合によって祝言、送別、追善、四季用などに分かれる。婚礼や宴席でめでたい小謡をうたう風習は今日でもまだ各地に残っているが、とくに江戸時代以降は小謡本の刊行が盛んで、一曲を通して稽古(けいこ)する素謡(すうたい)とは別の簡便な形として民衆の間に流行し、小謡本が寺子屋教本に用いられるほどであったという。

増田正造

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世界大百科事典(旧版)内の小謡の言及

【狂言謡】より

…劇中歌とは,狂言の演目から独立している小曲で,複数の演目に自在に流用される謡をさす。これには,酒宴の余興などに謡い舞われる小舞謡(こまいうたい)と称する小品舞謡曲と,人物の登退場時や酌をするときの小謡(こうたい)と称する短い謡の一節とがある。小舞謡は,現在,大蔵流に59番,和泉流に71番あり,《海人(あま)》《鵜飼》《景清》《泰山府君》《道明寺》《弱法師(よろぼし)》など能の謡曲出自のもの,《暁(あかつき)の明星》《宇治の晒》《海道下り》《七つに成子》《番匠屋》《府中》《柳の下》《よしの葉》《鎌倉》《柴垣》《十七八》《住吉》《兎》《瓢簞》《鶉舞》など,中近世の流行歌謡出自ないし狂言独自の創作歌謡がある。…

【能】より

…連吟ではロンギなどの部分を役を分けて謡うこともある。(9)小謡(こうたい) 上歌などの短い部分を,儀礼的な意味で謡う。(10)仕舞 クセ,クルイ,ノリ地などの舞いどころを,囃子なしに紋服等で舞う。…

※「小謡」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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