屯食(読み)とんじき

精選版 日本国語大辞典 「屯食」の意味・読み・例文・類語

とん‐じき【屯食】

〘名〙
① 平安・鎌倉時代宮中または貴族の家で催し事がある時、下仕えのものにふるまう酒食。また、それをのせた台。屯物。
九暦‐九暦抄・天暦二年(948)二月二〇日「寺座主鎮朝調屯食二具之」
② (「どんじき」と発音して) 江戸時代京都公家社会で、握り飯の称。〔随筆安斎随筆(1783頃)〕

と‐じき【屯食】

※宇津保(970‐999頃)蔵開上「かくて御産養(うぶやしなひ)三日の夜は、左大将殿し給ふ。〈略〉とじき十具ばかりにて百貫なんありける」

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デジタル大辞泉 「屯食」の意味・読み・例文・類語

とん‐じき【屯食/頓食】

平安・鎌倉時代、宮中や貴族の宴会のとき、庭上で下仕えの者に賜る酒食をのせた台。また、そこにのせた食物。特に、強飯こわめし卵形に握り固めたもの。
《「どんじき」と発音》江戸時代、京都の公家社会で、握り飯の称。

と‐じき【屯食】

とんじき(屯食)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「屯食」の意味・わかりやすい解説

屯食
とんじき

「とじき」とも読む。強飯(こわめし)を握り固めて鳥の卵のように丸く長くしたもの。屯は聚(しゅう)、「あつめる」の意。飯を握り集めたもの。現在の握り飯、弁当。皇子誕生や元服などの宴のとき、庭上に台などを出して、下郎たちにも賜るもの。「つつみいい」ともいう。『源氏物語桐壺(きりつぼ)の巻にみえる。

山中 裕]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「屯食」の意味・わかりやすい解説

屯食
とんじき

包飯 (つつみめし) ともいわれる。平安・鎌倉時代に,貴族のふるまいのときなど,一つ一つ台に載せて庭に並べ,おもに下仕えの者に賜わった弁当。また江戸時代には公家の社会で,強飯を握り固めた握り飯のことを屯食といった。

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世界大百科事典(旧版)内の屯食の言及

【給食】より

…給食の語自体は第2次大戦後一般的に使われるようになったものだが,実質的には古くから存在したはずである。飢饉のさいの施行(せぎよう)や災害時の炊出しもその一形態であろうし,平時のものでは平安期から宮中の大饗(たいきよう)などのさい下級職員たちに給付された屯食(とんじき)なども,給食の一種と考えることができよう。いずれにせよ,切り詰められた時間や予算内での大量調理によるものだけに,料理内容は低下しがちである。…

【握飯】より

…地方によっては晴の日に作り,神仏に供えるところもある。《貞丈雑記》に〈屯食と云はにぎり飯の事也〉とあるように,古く平安時代以降は屯食(とんじき)と呼ばれ,儀式や宴会のさい諸司や従者に給された。握飯を焼いたものは焼きむすびなどと称されるが,《大和本草》(1709)はこれを焼飯(やきいい)と呼び,下痢などの病人によいとしている。…

※「屯食」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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