強飯(読み)コワメシ

デジタル大辞泉 「強飯」の意味・読み・例文・類語

こわ‐めし〔こは‐〕【強飯】

糯米もちごめを蒸した飯。ふつう、小豆ササゲを入れて赤飯にする。おこわ。→こわいい(強飯)
[類語]めしライス麦飯冷や飯こわ赤飯炊き込みご飯混ぜご飯五目飯釜飯茶飯鮨飯舎利握り飯おにぎりお結び

ごう‐はん〔ガウ‐〕【強飯】

山盛りの飯を食うことを強制する儀式。日光輪王寺りんのうじで、正月・4月の祭礼、12月餅練もちねりなどに、参詣の大名などに山伏が強要した強飯式(現在は4月2日)が有名。日光責め

こわ‐いい〔こはいひ〕【飯】

《「ひめいい(姫飯)」に対して》粳米うるちまいこしきに入れて幾度も水をかけて蒸したもの。こわい。→こわめし(強飯)

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精選版 日本国語大辞典 「強飯」の意味・読み・例文・類語

こわ‐いいこはいひ【強飯】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 米を甑(こしき)に入れて蒸して炊いた飯。粘りのないかたい飯なので、笥(け)土器、葉などに盛った。これに対して水炊きの飯は、堅粥(かたかゆ)、姫飯(ひめいい)といった。こわい。〔十巻本和名抄(934頃)〕
    1. [初出の実例]「ここは、かかるところなれど、かやうに、たちとまり給ふ折々あれば、はかなき果物、こはいゐばかりは、聞し召すときもあり」(出典:源氏物語(1001‐14頃)薄雲)
  3. 祝いなどに用いるあずき入りの飯。赤飯。こわめし。
    1. [初出の実例]「ふかふかと置はすの葉の露みえて いげたちやまぬ盆のこはいひ」(出典:俳諧・毛吹草(1638)七)

強飯の語誌

( 1 )「源氏‐末摘花」には、「御かゆ、こはいひめして、まらうどにもまゐり給ひて」とあり、「かゆ」と「こわいい」が対比して用いられている。上代・中古の「こわいい」は、現在の糯(もち)米によるものだけではなく、粳(うるち)米を蒸したものもあったらしい。また、米に限らず麦、雑穀によるものにもいったようである。
( 2 )近世には主に糯米を蒸したものを指すようになり、また「めし」が日常語として広く用いられるに従って、「こわめし」と呼ばれるようになった。
( 3 )女房詞では、「こわくご」「おこわ」と呼ばれ、とくに「おこわ」は小豆を混ぜた赤飯にいうようになった。


ごう‐はんガウ‥【強飯】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 山盛りの飯を食べることを強要する作法。本来は食事を豊富に供し、客を歓待する作法であったが、若者たち大食や食いだめを競うようになり、また修練とも考えられることから、山伏の行法(ぎょうほう)にも取り入れられた。日光輪王寺で四月二日(もと正月二日)に行なわれる強飯式が知られる。
    1. 強飯<b>①</b>〈風俗画報〉
      強飯風俗画報
    2. [初出の実例]「強飯 当山御吉例の強飯(ガウハン)なり。世に日光責と称し所所の別所に、日光責の道具を数品掛ならべ置り」(出典:日光山志(1825)一)
  3. こわめし(強飯)
    1. [初出の実例]「強飯樽以下驚目了」(出典:言継卿記‐永祿一二年(1579)二月七日)

こわ‐めしこは‥【強飯】

  1. 〘 名詞 〙 糯米(もちごめ)を蒸籠(せいろう)で蒸したり、釜で炊いたりした、歯ごたえのある飯。ごうはん。→こわいい(強飯)
  2. (イ) 祝儀に用いるため小豆(あずき)を入れた飯。赤飯。おこわ。
    1. [初出の実例]「こは飯などくふ様、縦箸すわりたれ共箸にてくふべからず」(出典:今川大双紙(15C前)食物之式法の事)
  3. (ロ) 江戸時代、葬儀の時に用いた米だけの白蒸(しらむし)。または、白大豆や黒豆を混ぜた飯。
    1. [初出の実例]「こわめしに目玉の有はあはれ也」(出典:雑俳・柳多留拾遺(1801)巻九)

こわ‐いこはひ【強飯】

  1. 〘 名詞 〙 「こわいい(強飯)」の変化した語。
    1. [初出の実例]「あこぎ、いかで物まゐらん、いかに御心地あしからむと思ひまはして、こはひをさりげなくかまへて」(出典:落窪物語(10C後)一)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「強飯」の意味・わかりやすい解説

強飯(こわめし)
こわめし

おこわ、強飯(こわいい)ともいう。江戸時代までは米を蒸して飯にしたものを強飯といい、水を加えて柔らかく煮たもの、すなわち炊(かし)ぎ飯を弱飯(ひめ)または姫飯(ひめいい)といっていた。炊飯が一般化するようになってからは、これをご飯(はん)または飯(めし)といい、反対に糯米(もちごめ)を蒸したものを強飯またはおこわというようになった。米を蒸すのが通常の加熱法であった時代には、糯米でも粳米(うるちまい)でも強飯といったが、炊く方法が一般的になってからは蒸したものだけを強飯というようになり、さらに糯米を蒸さずに炊いたものを炊きおこわといっている。江戸中期の『貞丈雑記(ていじょうざっき)』に、強飯というのは白強飯で、赤飯は赤小豆(あずき)を混ぜた強飯、とある。江戸後期の『萩原随筆(はぎわらずいひつ)』には、京都では吉事に白強飯、凶事に赤飯を用いるのが民間の習慣で、江戸は4月から8月まで白強飯、9月から3月は赤飯を用いる、とある。現在では反対になり、吉事に赤飯、凶事には黒大豆を混ぜたり白強飯を用いるようになった。米粽(ちまき)は、ササの葉に糯米を包んで蒸してつくる強飯の粽である。

多田鉄之助


強飯(こわいい)
こわいい

強飯

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改訂新版 世界大百科事典 「強飯」の意味・わかりやすい解説

強飯 (こわめし)

甑(こしき)やせいろうで蒸した飯。《万葉集》巻五の山上憶良の〈貧窮問答歌〉に〈甑には蜘蛛の巣懸(か)きて飯(いい)炊(かし)く事も忘れて〉とあるように,もともと飯といえば蒸したものであった。今のように水を加えて煮た飯はやわらかいために姫飯(ひめいい),堅粥(かたがゆ)などと呼ばれた。姫飯が日常食として普及するにともなって〈こわいい〉,略して〈おこわ〉,さらに〈こわめし〉というようになり,多くもち米を用いて物日(ものび)に食するようになった。祝事にはアズキを加えて赤飯とし,不祝儀には白ダイズを加えるか,もち米だけの白蒸(しらむ)しを用いた。なお,栃木県日光の輪王寺で今でも毎年4月2日に行われる強飯式は高盛り飯を強制するもので〈ごうはんしき〉と呼ぶ。
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和・洋・中・エスニック 世界の料理がわかる辞典 「強飯」の解説

こわいい【強飯】

米を甑(こしき)に入れ、蒸した飯。ねばりがなく、固い。◇古代、米は蒸すほうが一般的で、蒸したものを「飯(いい)」、水を加えて炊いたものを「かゆ」といった。平安時代には蒸したものに「こわいい」という語が多く用いられるようになる。これに対し、かゆは水分の多いもの(現在のかゆにあたるもの)を「汁かゆ」、現在の普通の飯にあたるものを「かたかゆ」というようになり、後者を「弱飯(よわいい)」「姫飯(ひめいい)」ともいった。中世から近世にかけて炊いたものが一般化するにしたがって、「こわいい」は主にもち米を蒸したものをいうようになり、「こわめし」ともいうようになった。

こわめし【強飯】

もち米を蒸したもの。あずきを加えて作り、祝儀に用いるものをいうことが多い。また、何も入れない白いものや黒豆を加えたものを仏事に用いることもある。◇「おこわ」ともいう。あずきを加えたものは「赤飯」ともいう。

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百科事典マイペディア 「強飯」の意味・わかりやすい解説

強飯【こわめし】

おこわ,強飯(ごうはん)とも。元来は米を甑(こしき)や蒸籠(せいろう)で蒸して作った飯のことで,釜(かま)で水を加えてたく飯を姫飯(ひめいい)というのに対し,堅かったのでこの名が付いた。現在はアズキを混ぜて赤く染めることが多く赤飯(せきはん)と呼んで,おもに祝事に用いるが,凶事の際などに白おこわといって黒豆を入れて作ることがある。
→関連項目もち(糯)

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「強飯」の解説

強飯
こわいい

「おこわ・こわめし」とも。米を蒸したもの。水で煮る固粥・汁粥,すなわちのちのメシ・カユと対比されるが,むしろ古代では米を食するふつうの方法だった。現在では粳米(うるちまい)をメシとし,糯米(もちごめ)を蒸して強飯とする。赤飯は祝事の象徴だが,現在も宮座(みやざ)の神事などでは白い強飯が作られ,古代の食の伝統が神饌(しんせん)として残る。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「強飯」の意味・わかりやすい解説

強飯
こわめし

おこわ,こわいいともいう。米をせいろうで蒸した飯のこと。赤飯や,豆を入れたものもあり,祝事,慶事の食事として,水に浸して炊く軟らかい飯に対して区別されてきた。

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普及版 字通 「強飯」の読み・字形・画数・意味

【強飯】きようはん

強食。

字通「強」の項目を見る

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世界大百科事典(旧版)内の強飯の言及

【大炊寮】より

…平安時代末期以降,大外記中原師遠の子孫が頭を相伝し寮領を管領した。大炊寮は《和名抄》ではオホイノツカサ(於保為乃豆加佐)と訓じ,オホイはオホイヒ(大飯)で,飯は甑(こしき)で蒸した今日の強飯(こわめし)である。今日の米を煮た飯は饘(かたかゆ)で主水司がつかさどった。…

【飯】より

…〈たく〉は燃料をたいて加熱する意と思われる。飯の炊き方には煮る方法と蒸す方法とがあり,古く日本では(こしき)で蒸した強飯(こわめし)を飯(いい)と呼び,水を入れて煮たものを粥(かゆ)といった。粥はその固さによって固粥(かたがゆ)と汁粥(しるかゆ)に分けられた。…

※「強飯」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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