山椒太夫(読み)サンショウダユウ

デジタル大辞泉 「山椒太夫」の意味・読み・例文・類語

さんしょう‐だゆう〔サンセウダイフ〕【山椒太夫】

伝説上の人物。丹後国由良の富者で、強欲非道と伝えられる。安寿姫厨子王ずしおう姉弟を人買いから譲り受けて酷使したが、逃亡した厨子王敵討ちにあったという。名は、山椒売りの長者、または三つも山荘をもつ長者の意で、「山荘太夫」「三荘太夫」とも書く。
説経節五説経の一。の伝説を脚色したもの。江戸初期に流行。
浄瑠璃歌舞伎などの一系統で、説経節として語られたの伝説を脚色したもの。浄瑠璃「三荘太夫五人むすめ」など。
(山椒大夫)森鴎外の小説。大正4年(1915)発表。山椒太夫伝説に題材を取り、安寿と厨子王の受難と姉弟愛を描く。

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朝日日本歴史人物事典 「山椒太夫」の解説

山椒太夫

中世の説経節や伝説のなかで,安寿と厨子王の姉弟を酷使した長者の名前。山荘太夫とも書く。丹後(京都府)由良に住む在地の豪族がモデルになっている。山椒のサンジョは,算所,産所,散所などのあて字が使われており,領主特権を持って支配する特別な区画を指していた。山椒太夫は,サンジョに君臨する支配者として描かれ,その行為は残忍非道であり,売られてきた姉と弟を,奴隷のように扱い,ついに安寿姫を死に至らしめた。のちに厨子王は,サンジョを脱して,太夫に復讐する。サンジョで働く譜代下人の恨みが,山椒太夫に集中し,太夫は,地面に埋められ,竹の鋸で首を切られて死ぬことになる。

(宮田登)

出典 朝日日本歴史人物事典:(株)朝日新聞出版朝日日本歴史人物事典について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「山椒太夫」の意味・わかりやすい解説

山椒太夫
さんしょうだゆう

伝説。「三庄太夫」とも書く。原型は長者没落譚。丹後の由良の長者と,伝説を語り歩いたさんしょ (算所,散所,産所) の祈祷,遊芸者としての太夫とが混同されて成った話。『陸奥風土記』,丹後金焼地蔵本地の物語を合せて説経『さんせう太夫』に語られ,次いで古浄瑠璃『都志王丸』『山枡太夫』などがあり,操浄瑠璃に紀海音作『山椒太夫恋慕湊』,竹田出雲作『山荘太夫五人嬢』,近松半二ら合作『由良湊千軒長者』などがあり,また歌舞伎に『増補三荘太夫』がある。

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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「山椒太夫」の解説

山椒太夫 さんしょうだゆう

伝承上の人物。
丹後(京都府)由良(ゆら)の長者。奥州54郡の太守岩城(いわき)判官正氏の子,安寿・厨子王(ずしおう)の姉弟を人買いからかって酷使し,安寿を死に追いやり,のち厨子王に仇討(あだう)ちされる。中世末期から説経節などの語り物として流布し,のち浄瑠璃(じょうるり),歌舞伎などにも脚色された。森鴎外(おうがい)の小説「山椒大夫」の素材。山庄太夫,山桝太夫,山荘太夫ともかく。

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歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典 「山椒太夫」の解説

山椒太夫
(通称)
さんしょうだゆう

歌舞伎・浄瑠璃の外題。
元の外題
けいせい山椒太夫 など
初演
享保3.冬(京・大和山座)

山椒太夫
(別題)
さんしょうだゆう

歌舞伎・浄瑠璃の外題。
元の外題
さんせう太夫
初演
延宝3.9(江戸・大和守邸)

出典 日外アソシエーツ「歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典」歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典について 情報

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