川成(読み)かわなり

改訂新版 世界大百科事典 「川成」の意味・わかりやすい解説

川成 (かわなり)

洪水などのため,流失,崩失したり,土石にうずもれて耕作不能となった田畑中世では除田(じよでん)として年貢,公事が免除された。川成となった場合,多くはまもなく堰溝(えんこう)を新・改掘し,また川石や埋土を除いて開発が図られた。そして,再開発された田畑は,改めて課税されることになった。しかし,開発不能地は,永代の川成,古川成などと称され放置された。検注帳などの川成の面積が比較的狭小なのは,一つには,この再開発の結果と考えられる。ただ,堰溝の新・改掘をはじめとする作業には,多くの人力資力を必要としたので,被害の大きいときには,名主,百姓らから領主に人夫,食料の下給やほかの年貢の免除を求めることも見られた。なお,地頭や国人領主が,川成を理由に,荘園領主に年貢の減免を要求することもあった。また15世紀以降になると,守護は,国人領主らに対する特権賦与として,彼らの所領の一部を川成と称し,国家的賦課の基本台帳大田文の記載田数を個別的に減じた。ところで,15世紀末には,川成の売買が知られる。この場合,〈大儀大役〉のみは,その面積相当の役をつとめることが買い主に留保されていた。このことは,当時,戦時など非常のときには川成にも役が課せられるようになったことを示すといえる。近世でも,検地の折,川成の開発可能地は川成引かわなりひけ),川欠引(かわかけひけ)と称され,復旧するまで年貢が免除された。そのほかは棄地となった。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「川成」の意味・わかりやすい解説

川成
かわなり

江戸時代の租税法上の用語。洪水のため土砂が流出し,田畑が河川敷地となったもの。その場合,再検地のうえ,年貢課役を免除された。

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