朝鮮半島と済州島の中間にある島。韓国全羅南道に属する。東島(面積3km2),西島(6.9km2),古島(1.1km2)の3島からなる。3島に囲まれた内海は比較的穏やかで,漁船などの避難港に利用されている。近海はサバ,タイ,アジなどの漁場であるが,漁業に従事する島民は多くない。1971年の調査によると,3島合わせて人口6299,戸数1103で,2/3が専業農家である。水田はほとんどなく,畑作と家畜を中心に自給的農業に携わっている。済州海峡から朝鮮海峡へ抜ける航路上の要地にあり,19世紀末の列強の東漸時代には,戦略的拠点として争奪の対象となった。
執筆者:谷浦 孝雄
1885-87年,巨文島がイギリスに占領された事件。甲申政変ののち朝鮮政府内部にロシアへの接近策が生じたが,世界各地でロシアとの対立を深めていたイギリスはこれに対抗し,85年4月朝鮮海峡の要衝でロシア艦隊の通路にあたる同島を占拠,砲台を築いてポート・ハミルトンと命名した。朝鮮政府はこれに抗議し,ロシアも対抗措置を表明したため,87年2月清国の仲介によって撤退が行われた。朝鮮が帝国主義列強による領土分割競争の対象とされた事件で,こののちロシアが朝鮮の土地の租借を要求した事件に99年の馬山浦事件,1903年の竜岩浦事件などがあるが,いずれも日本の妨害で実現しなかった。
執筆者:吉野 誠
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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