日本大百科全書(ニッポニカ) 「市販薬のネット販売」の意味・わかりやすい解説
市販薬のネット販売
しはんやくのねっとはんばい
インターネットを通じて一般用医薬品を販売すること。2009年(平成21)2月6日に公布された「薬事法施行規則等の一部を改正する省令(平成21年厚生労働省令第10号)」に一般用医薬品のうち低リスクの第三類を除く第一類と第二類のネット販売を一律で禁じる規定が盛り込まれた。これに対し、ネット販売事業者のケンコーコムとウェルネットの2社が、憲法で保障された営業の自由を侵害していると主張して争っていた裁判は、2013年1月11日の最高裁判決で結審した。2社の主張が認められ、省令の規定は違法で無効であることが確定した。これにより、多くのネット販売事業者が市販薬のネット販売を再開した。
上記の省令は、店頭での対面でなければ副作用などのリスク情報を得られず、安全面で問題があるとの厚生労働省の考えによるものだが、ネット販売事業者側は、副作用の説明などはネットでも十分に行えると反発し、店頭での説明は十分に行われておらず、むしろネットのほうが動画、文章などを交えて正確に説明をできると主張した。また、身体の自由が利かない患者や近所に薬局がない地域に住む高齢者にとっては、ネット販売が必要不可欠と訴えた。
厚生労働省は、最高裁判決を受け、従来の規制にかわる新たなルールを策定した。医薬品の販売規制の見直しが行われ、「薬事法及び薬剤師法の一部を改正する法律」(平成25年法律第103号)により、一般用医薬品(第一類~第三類)のネット販売が、条件付きで可能となった(2014年6月施行)。第一類医薬品については、薬剤師による使用者の状態等の的確な確認と必要な情報の提供が義務づけられている(第二類は、個別の情報提供は努力義務)。なお、上記改正法で新設された「要指導医薬品(医療用から一般用に移行して間もないスイッチ直後品目、劇薬)」は、薬剤師が対面で情報提供・指導を行い販売する規定のためネット販売はできない(スイッチ直後品目は、原則3年で一般用医薬品へ移行、ネット販売可能となる)。
[編集部]