平和義務(読み)へいわぎむ

精選版 日本国語大辞典 「平和義務」の意味・読み・例文・類語

へいわ‐ぎむ【平和義務】

  1. 〘 名詞 〙 労働協約に伴う義務一つで、労働協約の存続期間中は、労使双方が協約の廃棄変更を求めるための争議行為を行なえないとする義務。

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改訂新版 世界大百科事典 「平和義務」の意味・わかりやすい解説

平和義務 (へいわぎむ)

労働協約を尊重し平和関係を乱さない義務。通常は,労働組合使用者または使用者団体との間に締結された労働協約(以下協約という)の有効期間中において,協約当事者は協約に定められた事項の廃棄・変更を求めて争議行為を行ってはならないという法的義務を指し,これをいわゆる〈相対的平和義務〉という。これに対し,協約に定められているかいないかにかかわらず,協約期間中はあらゆる事項についていっさいの争議行為を行ってはならないという義務をとくに〈絶対的平和義務〉という。平和義務の概念は,20世紀初頭にドイツの労働法学者によって提唱され,ワイマール期にかけて確立するに至るが,産業界の労働協約の例では学説に先んじて同様の義務を規定していたものが多数みられた。日本における平和義務論は,大正末期に学説によってドイツの平和義務論が紹介されて以来今日に至るまで,それを継受するかたちで展開してきている。そのため,いわゆる相対的平和義務は,労働協約に特有の本質的義務であり,協約当事者の特別の合意なくして発生する義務であるが,絶対的平和義務の発生には特別の合意が必要と解するのが一般的である。平和義務違反の争議行為が行われた場合(とくに労働組合側)には,組合や参加組合員は使用者に対して,協約違反・労働契約違反(場合によっては不法行為)に基づく損害賠償義務を負うと解せられる。ただし,最高裁判所は,平和義務違反の争議参加者に対する懲戒解雇処分の効力は否定している(1968年最高裁判所判決)。
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百科事典マイペディア 「平和義務」の意味・わかりやすい解説

平和義務【へいわぎむ】

労働協約の所定事項については,その有効期間中争議行為を行わないという労使双方の義務。協約所定事項以外の事項については,争議行為をすることができるという意味で,これを相対的平和義務ともいう。これに対して協約の有効期間中は一切の争議行為を行わない旨の協約条項をつくった場合,これを絶対的平和義務という。絶対的平和義務条項は,労働基本権たる争議権剥奪(はくだつ)するものとして無効とみる見解が多い。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「平和義務」の意味・わかりやすい解説

平和義務
へいわぎむ

労働協約の当事者が協約の有効期間中,争議行為を行わない義務。協約有効期間中,協約に定められた事項の変更を目的として争議行為を行わない義務を相対的平和義務,協約に定められている事項であると否とを問わず一切の争議行為を行わない義務を絶対的平和義務というが,通常,相対的平和義務をさす。平和義務は,従来協約に内在する不可欠の構成要素であるとする見解が強かったが,最近では協約当事者の合意に求める見解がふえつつある。平和義務違反に対する争議行為の法的効果については,民事免責刑事免責のいずれも失うとする説もあるが,学説の大勢は,少くとも刑事免責は失われないとする。

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