年賀とは、元来、高年の寿を祝うことばである。古稀(こき)、還暦(かんれき)、喜寿(きじゅ)などの祝いをいったものである。しかし、今日の年賀状は、新年の祝いの書状を略して年賀状としたものとされている。
平安のころより明治の初めまで、正月には1日から15日までに、主君、師匠、父母、親戚(しんせき)、知人、近隣の人々に年始の挨拶(あいさつ)をする習わしであった。これが、郵便が簡便に送られるようになってからしだいに流行し、現在の年賀状の形となった。
年賀状は、本来1月2日の書初(かきぞ)めの日に書いたものである。なるべく松の内(1月7日まで)に出すものであった。しかし現在は郵便事情により、1月1日に相手方に着くように12月に差し出すようになった。
年賀状は、冒頭に賀詞を書く。「謹賀新年」「迎春」「賀春」「新春のおよろこびを申し上げます」「あけましておめでとうございます」などのことばが、それにあたる。この文字は、本文より大きく書くのが決まりである。文全部が印刷してあるものは味けないので、一行二行個人的な添え書きをする。このほうが受け取った人は気持ちがよいので、近況を簡単に書き添えるとよい。服喪中にもらった年賀状は、松がとれて(1月8日)から返信を出す。遅れて出す年賀状は、冒頭の賀詞のあとに近況などを書き、遅れたことに触れないほうがよい。したがって年賀状は、新年の挨拶、相手方への問いかけ、自分の近況から成り立っていることを忘れてはならない。
[石川朝子]
…年始の形式には正式に訪問して饗宴を受けるもの,門礼(かどれい)といい門口や玄関で祝詞を交わすのみで次々と回礼して歩くもの,また総礼,一統礼(いつとうれい),名刺交換会などと称し,回礼を省略化し地域の者が一堂に会して行うものなどさまざまあるが,本来は一族の者が本家に参籠し,歳夜をともに明かして祖霊や歳神を祭り迎える儀式であったといわれている。四国などには,元日の朝早く分家一同が本家の表戸を開けに行く門開きと呼ばれる習俗も残されており,こうした一族の行事が地縁その他に拡張され,村年始といった全戸を回礼する習俗や,また都市にいたっては商家の顧客回りや職場の上司への年始,さらには訪問をいっさい欠いた年賀状の発達などに進展していったものと思われる。なお,年始客の接待に喰摘み,手掛けなどといい,三方にあしらった食物を出し食べるまねをさせる習俗があるが,これもこうした本来の神人共食が形式化したものである。…
※「年賀状」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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