数え年61歳のこと。本卦(ほんけ)がえりともいう。干支(えと)で年齢を数えると,満60歳の年にふたたび元の干支に戻る。たとえば,甲子(きのえね)生れの人が60歳になると,その年がまた甲子に当たる。そこで,生まれ直すという意味をこめて赤色の衣料品などを本人へ贈り,還暦の祝いをする慣習がある。還暦,古稀,喜寿,米寿,白寿などの年祝を総称して算賀,賀寿,あるいは〈賀の祝い〉というが,古稀以下が中世から祝われたのに対し,還暦の祝いは近世以降の慣習である。なお,かつて60歳か61歳で隠居をする例が多かった一因は,還暦観念に基づくものであろう。また往時の村落社会では,十三六十(じゆさんろくじゆう)とか十五六十と称して,13ないし15歳以上60歳までの村民が夫役に動員されることがあったが,この場合の60歳も還暦を区切りとしたものであり,さらにこれが隠居の契機ともなったものと思われる。
執筆者:平山 和彦
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数え年61歳の称。華甲(かこう)、本卦(ほんけ)返りともいう。華甲というのは、華の字が十の字六つと一の字からなっており、甲は甲子(きのえね)の甲で歳の意である。還暦、本卦返りというのは、干支(えと)によって年齢を数えるとき、数え年61年目に、生まれ年と同じ干支に返るからである。古くは40歳から10年目ごとに年祝いをしたので60歳を祝ったが、室町時代の末ごろから61歳の還暦を祝う風がみられるようになった。親戚(しんせき)知友が祝宴を開き、贈り物をするなど全国を通じておおむね同様な習俗がみられる。香川県では、61歳の祝いは子が祝ってあげるものといい、二つの大餅(もち)を配る所と、紅白の餅に、大豆を入れた三日月形の豆餅を添えて配る所があるという。神奈川県では、昔は頭巾(ずきん)、着物、羽織、帯、足袋(たび)など赤い衣装で宮参りした。期日は11月15日の七五三の日などにした。最近は男女とも平均寿命が延びたので、還暦の祝いは以前ほど盛大にしなくなった。
[大藤時彦]
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…通過儀礼の一つ。数え年61の還暦,70の古稀,77の喜寿,88の米寿,99の白寿などの〈長寿の祝い〉を総称して賀寿,賀の祝い,あるいは算賀というが,庶民の間ではこれを年祝と呼ぶことが多い。つまり以上の〈長寿の祝い〉が年祝の典型である。…
…これらの特性は,中国の老隠者のイメージにも重なるが,東アフリカの年齢階梯制に典型的にみられるように,アフリカなど多くの社会では,すべての人間が世代によってまったく異なり対立する理想を順次みずからの特性として体現しており,老人の特性も他の世代の特性と対立しながら,ある人間性の理想を象徴しているのだといえよう。年齢階梯制【小田 亮】
[民俗]
60歳以上の高齢者を一般に老人と呼ぶがこれは民俗学的にみれば61歳還暦の年祝いを契機としているといってよい。しかし労働力としての人間の世代区分からいえば,労働から引退する傾向が著しい65歳以上を老人とし,60代後半を老年初期,70代前半を老年中期,70代後半以降を老年後期とする区分もある。…
※「還暦」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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