座浴(読み)ザヨク

デジタル大辞泉 「座浴」の意味・読み・例文・類語

ざ‐よく【座浴/×坐浴】

[名](スル)座った姿勢で腰から下だけ入浴すること。腰湯

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精選版 日本国語大辞典 「座浴」の意味・読み・例文・類語

ざ‐よく【座浴・坐浴】

  1. 〘 名詞 〙 腰から下だけ湯につかること。病人などが全身の入浴ができないときにする。また、下半身血行をよくするためにも行なう。腰湯(こしゆ)。脚湯(あしゆ)
    1. [初出の実例]「痔の痛みを感じ出した。それは僕には坐浴(ザヨク)より外に癒すことの出来ない痛みだった」(出典:歯車(1927)〈芥川龍之介〉四)

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改訂新版 世界大百科事典 「座浴」の意味・わかりやすい解説

座浴 (ざよく)

かつて〈腰湯〉とも呼ばれていたもので,温湯,あるいは薬液に臀部を浸すことをいう。入浴できない人が臀部を清潔にしたり,身体を温めたりする目的で用いるもので,部分浴の一つである。日本人の入浴習慣からすれば,清拭(せいしき)に比べて身体も温まり,くつろぎや快感が得られ,就眠を助けるなどの効果も期待できる。また治療面からは,肛門や臀部の傷部を清潔に保ち,痛みや充血肛門括約筋の緊張をやわらげるなどの効果が期待されている。具体的には,38~40℃の温湯(または必要に応じて薬液)を臀部が入る大きさの容器に臀部を入れてもあふれでない程度に用意する。所要時間は全身の状態や季節によっても多少の差はあるが,15~20分程度。肛門部の傷などで痛みが激しい場合は,容器の中に円座を用いて行う。行う際には人目を気にしなくてもよい場所を選び,露出部分を最小限にとどめる。また腰の周囲や足をバスタオルなどでおおい,保温に留意するとともに衣類をぬらさない工夫をする。多少熱めのあがり湯を十分用意し,さし湯の場合には,身体から遠ざけ,容器の縁にそって少量ずつ入れながら一方の手でかきまぜる。座浴専用の容器を準備するか,他に転用する場合はクレゾール消毒するなど,汚染や感染を防ぐ。近年シャワー普及により,夏季などは,その簡便さ,清潔さの点からもシャワーの使用が一般的となっている。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「座浴」の意味・わかりやすい解説

座浴
ざよく

水治療法の一つで、下腹部、臀部(でんぶ)を温湯または薬液に入れて洗い温める方法をいう。腰湯(こしゆ)ともいわれ、日本では古くから行われていた方法である。近年は各家庭に浴室、シャワーが普及したので、清潔のためにはシャワーで洗うことが多くなったが、温めるという点では座浴のほうが効果的である。骨盤内の諸疾患、とくに痔疾(じしつ)(日本人には多い)、肛門(こうもん)およびその周囲に創(きず)などがある場合、創部の清潔、疼痛(とうつう)緩和、肛門括約筋の緊張緩和を目的として座浴が用いられる。また、下痢、裏急後重(りきゅうこうじゅう)(腹しぶり)、排尿痛、性器の炎症時などのほか、長期間入浴できない病人の陰部の保清のためにも行われる。なお、薬液を用いる場合は、医師の指導を受けなければならない。温湯の温度は38~40℃くらいで、時間は15~20分間ほどがよい。医師などから指示された場合は、その基準に従うことがたいせつである。施行にあたっては、寝衣をぬらさないようにする、寒気をおこさないようにする、恥ずかしさを感じさせないようにする等の配慮が必要である。時間が長いときは適宜差し湯をする。疲れやすいときや疼痛が激しいときは、たらいの中にゴム製の円座を置いて、その上に腰を下ろして行うとよい。なお、痔疾などで薬剤の塗布、坐薬(ざやく)の挿入が必要である場合は、座浴のあとで行うようにする。

[山根信子]

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