クレゾール(読み)くれぞーる(英語表記)cresol

翻訳|cresol

日本大百科全書(ニッポニカ) 「クレゾール」の意味・わかりやすい解説

クレゾール
くれぞーる
cresol

殺菌消毒剤。オルトメタパラの3異性体の混合物で、石炭タールから得られるが、現在は石油分解物の蒸留による方法や化学的合成によってつくられる。無色または黄色ないし黄褐色の澄明な液で、フェノールのようなにおいがある。水に溶けにくいのでせっけんと混和し、クレゾールせっけん液として消毒に用いられる。殺菌力はフェノールよりやや強く、毒性はやや弱い。日本薬局方にはクレゾール、クレゾールせっけん液、クレゾール水が収載されている。

[幸保文治]

クレゾールせっけん液

処方はクレゾール500ミリリットル、植物油300ミリリットル、エタノールエチルアルコール)50ミリリットル、水酸化カリウム63グラム、常水適量を加え、全量を1リットルとする。あらかじめ植物油とエタノールを加温しておき、水酸化カリウムを常水に溶かした液に加え、加熱してけん化しせっけんをつくり、これにクレゾールを加えて製したものである。黄褐色ないし赤褐色の粘性の液で特異なにおいがあり、水、エタノール、グリセリンとよく混ざる。かつては手指の消毒に1~3%の水溶液がよく用いられたが、逆性せっけんなどの、殺菌力が強くにおいのないものが開発されたため、現在はあまり使用されず、伝染病患者の排泄(はいせつ)物の消毒に5~10%液が、また器具の消毒に3~5%液が用いられるにすぎない。なお、この3%水溶液がクレゾール水である。

[幸保文治]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「クレゾール」の意味・わかりやすい解説

クレゾール
cresol

化学式 CH3C6H4OH 。メチルフェノールのこと。 o -,m -,p -の3種の異性体がある。工業的にはこれらの混合物をさす。コールタールの低温乾留の際の 200~220℃の留分中に含まれる。現在は石油のクラッキングで得られる。いずれもフェノール臭をもち,空気中では次第に暗褐色に変る。 (1) o 体 融点 30.9℃,沸点 191℃,比重 1.047 (20℃) 。 (2) m 体 融点 11.5℃,沸点 202.2℃,比重 1.0336 (20℃) 。 (3) p 体 融点 34.8℃,沸点 201.9℃,比重 1.0341 (20℃) 。どれも消毒や防腐剤に,起泡剤として浮遊選鉱に,合成樹脂や有機薬品の合成原料に用いられる。 o 体は硝酸塩,ヒ酸塩の検出試薬に利用される。

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