[ 一 ]の挙例「万葉‐八五四」の、「かはかみ」は、川のほとりの意とする説もある。
奈良県中東部、吉野郡にある村。吉野川上流に位置し、深いV字谷の急斜面一帯にスギ、ヒノキの人工美林が茂り、吉野林業の中心地。中心集落は迫(さこ)で村役場があり、式内社丹生(にう)川上神社上社が鎮座する。村内には金剛寺、自天親王神社など後南朝の歴史にまつわる遺跡、伝承地が多く、毎年2月5日には親王の遺品を拝する「朝拝式」が行われる。北部の大峰山脈は吉野熊野国立公園の一部をなし、国指定の天然記念物三ノ公(さんのこう)川トガサワラ原始林や灌漑(かんがい)・発電用の大迫(おおさこ)ダムなどがあり、ダム北岸には入之波(しおのは)温泉がある。大迫ダムの下流には大規模な多目的ダムの大滝ダムがある。大滝ダムは1988年(昭和63)から本体工事が行われ、2003年(平成15)3月には試験湛水(たんすい)を開始したが、白屋地区において地すべりが発生、その後迫地区などでも地すべりがおきたため現在は地すべり対策の工事を行っている。吉野川に沿って走る国道169号(東熊野街道)は木材のトラック輸送に利用され、伯母峰(おばみね)峠から大台ヶ原山へはドライブウェーが通じる。特産品は茶、シメジ、柿(かき)の葉ずしなど。過疎化が進んでいる。面積269.26平方キロメートル、人口1156(2020)。
[菊地一郎]
『『川上村史』全2巻(1987、1989・川上村)』
岡山県西部、川上郡にあった旧町名(川上町(ちょう))。現在は高梁市(たかはしし)の一地区。1954年(昭和29)手荘(てのしょう)町と大賀、高山(こうやま)の2村が合併して成立。2004年(平成16)高梁市、有漢(うかん)町、成羽(なりわ)町、備中(びっちゅう)町と合併、高梁市となる。旧町域は、成羽川支流の領家(りょうけ)川の谷と吉備(きび)高原上の平坦(へいたん)面よりなり、国道313号が通じる。高原面は石灰地形が多く、水田より畑作が主。果樹、抑制野菜、タバコなどを栽培する。弥高山(やたかやま)(県指定名勝)、磐窟谷(いわやだに)(国指定名勝)、大賀の押被(おしかぶせ)(国指定天然記念物)、神野(ほや)のドリーネなど石灰台地特有の地形にみるべきものが多い。
[由比浜省吾]
岡山県北部、真庭郡(まにわぐん)にあった旧村名(川上村(そん))。現在は真庭市の北西部を占める地域。旧川上村は、2005年(平成17)北房(ほくぼう)、勝山(かつやま)、落合(おちあい)、湯原(ゆばら)、久世(くせ)の5町、美甘(みかも)、八束(やつか)、中和(ちゅうか)の3村と合併して市制施行、真庭市となった。旧村域は、旭(あさひ)川源流域の蒜山(ひるぜん)盆地の西半を占め、盆地底の氾濫(はんらん)原と河岸段丘は水田に、蒜山の裾野(すその)は畑地や牧場に利用されている。ダイコンを特産し、酪農はジャージー種乳牛に特色がある。北部は大山隠岐(だいせんおき)国立公園の一部で、蒜山原西部の三木ヶ原(みきがはら)には休暇村蒜山高原、中国四国酪農大学校の牧場、スキー場がある。米子自動車道蒜山インターチェンジがあり、観光客が多い。
[由比浜省吾]
『『川上村史』(1980・川上村)』
長野県南東部、南佐久郡(みなみさくぐん)にある村。千曲川(ちくまがわ)最上流部を占める。千曲川上流域の狭長な氾濫原(はんらんげん)と、八ヶ岳(やつがたけ)火山の裾野(すその)に集落や耕地が分布する。JR小海(こうみ)線が通じる。標高1100~1400メートルの高冷地で、第二次世界大戦までは木材と産馬の収入に頼る山村であったが、戦後はレタスなど日本有数の夏野菜の産地となり、おもに東京方面に出荷され、1戸当り農業粗生産額は全国最高水準にある。広大な高原と夏の涼しさのため、別荘や学校寮も増えている。金峰山(きんぷさん)、甲武信ヶ岳(こぶしがたけ)への登山口にもあたり、野辺山(のべやま)高原も同村域の一部。国指定史跡の大深山遺跡(おおみやまいせき)は縄文時代中期の遺跡で、出土品は考古館に保存陳列されている。面積209.61平方キロメートル、人口4344(2020)。
[小林寛義]
『長野県地理学会編『川上村の動き』(1953・川上村)』
山口県北部、阿武郡(あぶぐん)にあった旧村名(川上村(そん))。現在は萩市(はぎし)の南東を占める地域。旧川上村は、2005年(平成17)萩市と合併した。防府(ほうふ)と萩市街地を結ぶ国道262号が地域の西端を通る。地域の87%が山林で、スギ、ヒノキ、アカマツの良材を産出する。1975年(昭和50)県下最大の県営阿武川ダムが建設され、205戸の民家が水没、民具類が阿武川歴史民俗資料館に展示されている。村内に自生するユズ、ナンテンは例の少ない群生地として国の天然記念物。県立自然公園長門峡(ちょうもんきょう)の渓流はアユ釣りで知られ、湯ノ瀬温泉がある。
[三浦 肇]
『『川上村誌』(1964・川上村)』
岐阜県南東部、恵那郡(えなぐん)にあった旧村名(川上村(むら))。現在は中津川市の北東部を占める地域。旧川上村は2005年(平成17)坂下(さかした)、付知(つけち)、福岡の3町、加子母(かしも)、蛭川(ひるかわ)の2村、および長野県山口村とともに中津川市に編入。木曽(きそ)川の支流川上川の最上流域にある山村で、地域の約92%が山林。木曽ヒノキの産地である。川上川の渓谷には竜神ノ滝など滝が多く、景色も美しく、裏木曽県立自然公園の一部をなす。夕森(ゆうもり)公園にはキャンプ場がある。
[上島正徳]
『『川上村史』(1983・川上村)』
狂言の曲名。座頭狂言。和泉(いずみ)流だけの曲。大和(やまと)の国吉野に住む盲目の夫(シテ)が、その山奥の川上という所に眼病に効く地蔵があると聞いて出かける。さて地蔵に着き参籠(さんろう)すると、夢のお告げを受けて目が明く。帰途についた夫は、迎えにきた妻と途中で出会い喜びあうが、地蔵が開眼の条件として悪縁ある妻と離別せよといったので承諾したと話す。怒った妻は、地蔵をののしり夫を恨み、どうしても別れないと言い張る。夫もしかたなく連れ添い続ける決心をすると、たちまち盲目に戻ってしまう。夫婦は泣き沈むが、これも前世の因果かとあきらめ、手を取り合って帰って行く。真の幸福とは何かを問いかける、悲哀の漂う深刻な曲。この地蔵は奈良県吉野郡川上村に現存する金剛寺のことらしい。
[小林 責]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
狂言の曲名。座頭狂言。奈良の吉野の里に住む盲目の男が,山奥の川上というところに霊験あらたかな地蔵があると聞き,参籠して開眼の祈願をこめる。効あって霊夢をこうむるとともに,みごと開眼する。喜んで帰宅する途中,迎えに来た妻と出会うが,男は〈現在の妻とは悪縁だから離縁しなければふたたび目がつぶれるぞ〉という地蔵の告げを守らなければならず,別れ話をもち出す。妻は驚き悲しみ,頑として聞き入れない。男もしだいに妻に同調し,今までどおり添いとげようと決心する。その途端に両眼はふたたびつぶれてしまう。夫婦は嘆き悲しむが,これも前世の因縁かとあきらめ,手を取り合って帰路をたどる。登場人物は夫と妻の2人で,夫がシテ。現行曲としては和泉流だけにある。現世利益(りやく)と宿命との葛藤,夫婦の情愛,悟達へと導かれる人間の姿を描き,シテ,アドとも熟達した演技力を要する。笑劇を主とする狂言のレパートリーの中では異色の名作。前半,特有の杖の扱いを見せながら参詣し,やがて開眼するまでの演技は,ほとんどシテの独演。
執筆者:羽田 昶
奈良県東部,吉野郡の村。人口1643(2010)。紀伊半島中央部の山岳地帯にあり,吉野川上流域を占める。吉野川のV字谷沿いに国道169号線が走り,東は台高山脈によって三重県に接する。山腹のなだらかな土地を切り開いてできた林隙(りんげき)集落と,木材を集散するのに便利な位置にできた土場(どば)集落が,村内に散在する。中心集落は北西部にある迫(さこ)で,止雨,祈雨の神として知られる丹生川上神社上社がある。吉野杉の森林地帯にあるため主産業は林業で,就業人口の約1/3を林業従事者が占める。木材の運搬は古くはいかだに組んで吉野川を下したが,現在はトラック輸送に変わった。林業のほか,シメジ栽培,アメノウオの養殖,工芸品作りなどが行われる。村の南東部には,1972年に完成した灌漑発電用の大迫ダムがある。南朝関係の遺跡,伝説も多い。
執筆者:松原 宏
長野県中東部,南佐久郡の村。人口4972(2010)。千曲川源流域に位置し,村域の9割近くが関東山地に属する。西流する千曲川沿岸にわずかに平地が開けるが,金峰山,国師ヶ岳,甲武信ヶ岳など標高2000m以上の山々に囲まれ,かつては〈陸の孤島〉といわれた寒村であった。1936年,国鉄(現JR)小海線が全通したころから高原野菜栽培が導入され,第2次大戦後は高冷地の条件を生かしてレタス,ハクサイを中心とする高原野菜の大規模な産地となり,農家1戸当りの生産額は全国最高水準に達した。林野の畑地化,大型機械の導入なども進められ,近代的農村に変貌した。大深山遺跡(史)は標高1300mの高所にあり,縄文遺跡としては全国で最高所に位置するといわれる。かつて狩猟に欠くことのできなかった猟犬〈川上犬〉は県天然記念物。
執筆者:柳町 晴美
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
…中央を重信川が西流し,松山平野南東端の低地が開ける。谷口集落の川上は松山,西条,面河(おもご)へ至る交通の要地で,近世には宿場が形成され,商家が立ち並び,伝馬屋も置かれた。農林業が町の基幹産業で,米麦作のほか,ミカン,野菜の栽培,養蚕が行われる。…
※「川上」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
〘 名詞 〙 年の暮れに、その年の仕事を終えること。また、その日。《 季語・冬 》[初出の実例]「けふは大晦日(つごもり)一年中の仕事納(オサ)め」(出典:浄瑠璃・新版歌祭文(お染久松)(1780)油...
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