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引用の音楽 いんようのおんがく

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

引用の音楽
いんようのおんがく

音楽的引用ともいう。主として 1960年代後半から作曲家たちが意図的に用い始めた手法で,過去の作曲家の音楽作品の一部を,そのまま,あるいは多少変更して自作に用いることを意味する。グレゴリオ聖歌を用いた中世のオルガヌムやモテト,ルネサンス期のパロディ・ミサ,あるいは他人の主題による変奏曲,標題を補強するための国歌や他人の作品の引用など,西洋音楽においては過去にも多く引用が用いられたが,60年以降の引用は,出典作品が担っていた意味論上の意図をあまりくまず,また変奏もされず,場合によってはさまざまな引用を同時に行なってコラージュのような切り張り的効果を狙っているという点で,特殊なものである。引用の意図は作品により異なるが,たとえば,19世紀以来の古典的作品観への反発から,ちぐはぐな全体を持つ,「開かれた作品」を作るため,また,過去の作品を異化的に用いることによって,伝統との距離を確定するため,あるいは伝統に帰属していることを象徴的に示すためなどが理由としてあげられる。引用を用いた初期の作曲家としては,イタリアの L.ベリオ,ドイツの B. A.ツィンマーマンなどが代表的。ことに前者の『シンフォニア』 (1968~69) は,マーラーやストラビンスキーなど,多数の引用によって,現代作品の中でも,最もポピュラーなものの一つである。

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