米を主食とする場合、ビタミン、無機質、アミノ酸(リジンやスレオニン)を添加した米が強化米である。栄養素の強化は、習慣的に摂取している食品に欠乏しがちな栄養素を、国民栄養的立場から補う意味をもっている。日本人は米を主食とし、炭水化物を多く取り入れるので、ビタミンB1の摂取に注意しなければならなかったが、玄米のB1は胚芽(はいが)とぬか層に多いため精白によって失われ、しかもB1は水に溶け熱に不安定であるので白米の淘洗(とうせん)と炊飯の過程で失われる。このためB1の強化が国民的課題となり、厚生省(現、厚生労働省)は昭和30年代、配給米にビタミンB1強化米を混入することに踏み切った。
日本でおもに用いられている強化米は、水に不溶性のビタミンB1誘導体(たとえばDBT=ジベンゾイルチアミンなど)の酸性溶液に白米を浸漬(しんし)し、B1を吸収させたのち中和蒸気加工し表面を糊化(こか)させ乾燥する。これはいわゆるプレミックスとパーボイルドライスの応用である。前記強化米は1グラム中約1.5ミリグラムのビタミンB1を含み、精白米に200分の1程度混和する。なおB1を強化した米を識別できるよう、普通、ビタミンB2をごく少量加え黄色に着色してある。古典的な強化米プレミックスは、栄養素(たとえばB1、ニコチン酸、鉄)を白米に噴霧し、乾燥後、淘洗の際溶出しないように外を皮膜で覆ったもので、ホフマン・ラ・ロッシュ社が最初に特許をとった。またパーボイルドライスは、東南アジアで古くから行われていたもので、脱穀の際砕米を防ぎ、また虫害を受けないよう経験的に行われていた。すなわち、籾(もみ)米を水に浸漬して水分を30~40%まで吸水させ、加熱乾燥し、表面を糊化硬化させる処理で胚芽のビタミンB1・B2、ニコチン酸などが一部胚乳に移行し、結果として強化米となっていた。国連食糧農業機関(FAO)が着目改良してコンバーテッドライス(改良米)とした。
さらに、小麦粉およびデンプンを原料とする人造米に、栄養素を加えた強化人造米もつくられている。タイで試験的に用いられたリジン強化米はこの方法によった。
[不破英次]
精米にビタミンB1,B2などを増強したもの。従来から市販されている強化米は1g中にビタミンB11.5mgを含み,ビタミンB2で着色してあり,グルタミン酸ナトリウムも若干入っている。普通の精米に強化米を重量で200:1の割合で混入し使用する。最近,精米にビタミンB1,B2だけでなく,さらにナイアシン,ビタミンB6,パントテン酸,ビタミンEなどのビタミンおよびカルシウム,鉄を添加した新強化米が発売された。
外国の強化米の一つにパーボイルドライスparboiled riceがある。この米はインド,ミャンマー,パキスタン,中近東,アフリカの一部などで古くから常食されている。原始的な方法はもみを水に漬け,壺に入れて加熱し,日光にさらして乾燥後搗精(とうせい)するのであるが,その後工業化された方法でも水漬(すいし)→蒸煮→乾燥→搗精の操作は従来と変りない。このパーボイルドライスを食べている地方の人々に脚気の少ないことから研究が進められ,上記のような操作を行う間に胚芽やぬか層に存在するビタミンB1やその他の水溶性成分が胚乳に移行することがわかった。このため搗精して精米になってもビタミンB1が100g中0.25mg程度含まれていることになる。しかしもみがらやぬか層の色が胚乳に移行して精米に色や一種のにおいのつくことが日本人の嗜好からみると欠点である。
執筆者:竹生 新治郎
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…日本で行われている強化食品は,米,みそ,豆腐,牛乳,菓子類などである。(1)強化米 搗精により失われるビタミンB1を強化する。B1はデンプンの体内での代謝時に必要なビタミンで,とくに強化の必要性が高い。…
※「強化米」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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