後天性血小板機能異常症

内科学 第10版 「後天性血小板機能異常症」の解説

後天性血小板機能異常症(血小板/凝固系の疾患)

定義・概念・分類
 後天性血小板機能異常は種々の疾患もしくは薬剤などに伴い発症する(表14-11-8).先天性より頻度は高い.その異常の程度も基礎疾患の状態により変動する.
病態生理
 慢性腎不全では凝集や放出機能の低下を認める(血小板内カルシウム低下,アラキドン酸代謝障害).体外循環による血小板機能異常は循環中に血小板が活性化するためと考えられ,ストレージプール病様病態を呈する.この機序も複数の因子によると考えられているが,透析の後で血小板機能が改善することより,透析により除去される物質,プロスタグランジン代謝異常などが関与しているものと考えられている.
 骨髄増殖性疾患のうち特に血小板増加の認められる症例(慢性骨髄性白血病,原発性血小板血症,真性多血症など)および骨髄異形成症候群などで血小板機能異常が出現することがある.前者ではαアドレナリン受容体欠損,後天性ストレージプール病(SPD)や血小板とトロンビンの結合障害などが,後者では後天性SPDやトロンボキサンA2の活性低下などがその機序として指摘されている.
 多発性骨髄腫マクログロブリン血症などで血小板機能低下が認められることがある.異常蛋白が血小板機能を障害すると考えられている.
 また自己免疫疾患において抗血小板抗体が産生され機能異常が出現するもので,ITPSLEなどの疾患で認められることが多い.その他肝疾患,糖尿病,食物DICなどでも血小板機能が異常となる.
 薬剤性出血傾向は,日常臨床で最も頻度が高い.検査値の異常(出血時間血小板凝集能)のみで出血傾向がない場合も多い.この場合でも手術による出血量が増加することがあり注意を要する.NSAIDsをはじめとして抗菌薬や精神安定薬など日常頻回に使用しているものも多い.アスピリンによる血小板機能阻害は非可逆的であるため,機能回復には新しい血小板に置き換わる必要がある.通常,服用中止後7~10日間抑制効果が持続する.ほかの原因で出血性素因を有する患者へのこれらの薬剤の投与は注意深く行う必要がある.アスピリン以外の多くの抗炎症薬が血小板機能を低下させることが知られている.しかし血小板凝集能の低下があっても臨床上問題となる出血は消化管出血を除くと比較的少ない.またβラクタム環をもつ抗菌薬に共通して血小板機能抑制作用がみられる.これらは用量および使用期間に依存しており,特に大量使用の際に血小板凝集能の低下,出血時間の延長が報告されている.詳細は不明であるがこれらは血小板膜の脂質と結合することにより膜蛋白の受容体機能を低下させると考えられている.血小板機能が回復するには抗菌薬中止後,数日を要するとされる.[村田 満]

出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報

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