改訂新版 世界大百科事典 「忌籠祭」の意味・わかりやすい解説
忌籠祭 (いごもりまつり)
斎籠祭,居籠祭とも記す。祭りの執行に際して,神職など祭りに直接関与する者は外部との関係を絶ち,神霊を迎えることができる心身になるために,特定の期間・場所で心身を慎む。これが氏子全員に課せられている祭りをとくに忌籠祭という。土佐神社の斎籠祭(3月11~13日)においては,3月11日より祭りに奉仕する神職は外部との関係を絶ち社内に参籠した。そして玉垣の扉も閉じ氏子の参拝も門外からとした。また行事は高声大音を禁じ,低声微音で執行された。加えて祭りの期間中,氏子は臼や糸車にいたるまで,いっさい音をたてることを禁じられていた。また出雲大社の神幸祭においては,祭りの中心行事である8月14日夜の大国主命の神幸に際して,氏子は早くから門戸を閉じ,謹慎して戸外に出ないことにしている。これら心身ともに謹慎して,全員で神霊を迎えるという行事は,現在大晦日にそのなごりがみられ,以前には一般的におこなわれていたものと推察される。
→物忌(ものいみ)
執筆者:宇野 正人
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報