思案橋(読み)シアンバシ

デジタル大辞泉 「思案橋」の意味・読み・例文・類語

しあん‐ばし【思案橋】

歴史上人物などが渡ろうか渡るまいか、思案したと伝えられる橋。また、そこで、遊郭へ行こうか行くまいかと思案したという橋。本来橋占はしうらの行われた場所といわれる。

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精選版 日本国語大辞典 「思案橋」の意味・読み・例文・類語

しあん‐ばし【思案橋】

  1. [ 1 ] 〘 名詞 〙 歴史上の著名人物などが、右へ行こうか左へ行こうかと思案したなどの伝説をもつ橋。また、その伝説。本来は橋占(はしうら)の行なわれた場所といわれる。
  2. [ 2 ] ( 江戸初期、この橋の付近元吉原の遊郭があり、この橋で行こうかやめようかと思案したところから呼ばれたという ) かつて東京都中央区小網町一丁目と二丁目との間にあった堀に架けられていた橋。元和四年(一六一八)から明暦三年(一六五七)まで、吉原の遊郭はこの橋の近くの日本橋葺屋町(現在の人形町の付近)に置かれていた。
    1. [初出の実例]「江戸にて 思案橋の霜は談合柱かな〈政之〉」(出典:俳諧・詞林金玉集(1679)一四)

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日本歴史地名大系 「思案橋」の解説

思案橋
しあんばし

三国湊と滝谷たきだに出村との間の川に架かる小橋

越前国名蹟考」に「三国と出村との間に在り、此川上にかゝれる橋を俗にわさくれ橋といふ」と記されるが、三国湊新古名所記(浄願寺蔵)には、「日和山ノ麓、木場ノ渡口ト滝谷街トノ間ニカヽレル小ク短キ橋ニシテ、正ク彼ノ街ニ越ルノ橋ナリ、其イフトコロハ、遊冶郎ノ輩此橋マテ来テ、我家ノ首尾ヲ案シテ、コレヨリ帰ンヤ、コレマテ已ニ来レルコトナレハイヨイヨ趣ンヤト心決セス、或ハ又イヨイヨ足ヲ運ル如ク、出村ヘヤユカン、将上街うはまちヘヤユカンナトヽ心マチマチニシテ決セス、足タチモトホリ、ソコニタヽスムユヘ思案橋トイフイワレ、橋ノカヽレル後ニ人ノ付タルモノナリ」と記す。

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百科事典マイペディア 「思案橋」の意味・わかりやすい解説

思案橋【しあんばし】

江戸元吉原,長崎丸山の思案橋など各地遊里入口にある橋。遊ぶか戻るか男が橋の上で思案するのに由来するというが,遊里以外の地にも思案橋の名がある。

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世界大百科事典(旧版)内の思案橋の言及

【橋】より

…〈ささやきの橋〉の名称は,占いを求めてその橋を渡ると,神の霊示があるとされたことに由来する。京都島原の遊廓の前にあった〈思案橋〉は,橋占のためにその上をしばらく行きつ戻りつしたことにちなんでおり,その脇には見返り柳のような神の宿る木も植えられていた。姿不見橋,面影橋などの名称も,これらと一連のものである。…

【遊郭(遊廓)】より

… 各地によって多様な構図をもつ遊郭の基本的な設計は,上記のように周囲を溝や塀で囲み,大門(おおもん)(出入口)のみによる通行とした(裏門はあっても非常用である)。市中から大門に至る道には,遊郭行きをためらう思案橋(しあんばし),遊郭に近づいて身づくろいする衣紋坂(えもんざか)などが配置され(橋や坂は地形によって変わる),大門のそばには柳の木が植えてあることが多い。大門内には出張武士と町内役人の番小屋が並んで,出入人の監視と郭内の治安維持にあたった。…

※「思案橋」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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