六訂版 家庭医学大全科 「急性砒素中毒」の解説
急性砒素中毒
きゅうせいひそちゅうどく
Acute arsenic poisoning
(中毒と環境因子による病気)
どんな病気か
原因は何か
亜砒酸は薬品の材料などとして広く用いられていますが、一般においても、以前からシロアリ駆除剤などに使われ、比較的ありふれた薬品といえます。無味無臭でもあることから、昔から自殺や他殺にしばしば使われてきました。
症状の現れ方
食べ物などに溶けている状態の亜砒酸を摂取すると、数分以内に激しい嘔吐が始まり、2時間ほどして下痢も起こります。それとともに血圧低下がみられます。また、腹痛も多くみられます。結晶の亜砒酸を摂取した場合は、症状の発現は若干遅れます。これらの症状はいずれも、少なくとも数日間続きます。
その他、頭痛、脱力感、運動麻痺、知覚障害、皮膚の紅斑・色素沈着、結膜炎、脱毛、顔面浮腫(むくみ)、腎不全などが生じます。けいれんや精神障害がみられることもあります。重症の血圧低下や急性腎不全が起こると死亡します。
検査と診断
吐物中の砒素を
治療の方法
すみやかに吐かせ、胃の洗浄を行います。下剤と活性炭の投与も行います。
キレート剤(金属をはさみ込んで体外に排出させやすくする薬)としては、ジメルカプロール(バル)がありますが、時期を逸すると効果が乏しくなるため、摂取後できるだけ早く投与する必要があります。
輸液を十分に行い、水分と電解質の管理をします。血圧の低下に対する循環管理も重要です。その他、呼吸管理、対症療法を行います。最重症では透析を行いますが、著明な効果は期待できません。
病気に気づいたらどうする
すぐに、できるだけ吐かせるようにして、救急病院に搬送してください。
関連項目
栗原 伸公
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報