日本映画。1976年(昭和51)作品。大島渚(おおしまなぎさ)監督。1972年にフランスのアナトール・ドーマンAnatole Dauman(1925―1998)と会い、合作でポルノを撮ることを依頼され、1975年から大島渚プロダクションとアルゴス・フィルムの提携作品として製作、日本では東宝東和配給で公開された。1936年(昭和11)、世間を騒がせた阿部定(あべさだ)(1905―?)事件を大島が脚色。フランスでの公開題は「官能の帝国」。料亭の女中定(松田英子(まつだえいこ)、1952― )は、主人吉蔵(藤竜也(ふじたつや)、1941― )に惚(ほ)れ、情を通じてしまう。二人は激しい愛欲にとらわれ、待合、料亭、旅館と部屋を変え、性交を繰り返す。やがて定は、性愛の極で吉蔵の首に腰紐(ひも)を巻きつけ絶命させ、局部を牛刀で切り取り、あふれ出る血で吉蔵の腿(もも)に「定吉二人きり」と書く。日本で撮った未現像のフィルムをフランスで現像・編集するハードコア・ポルノ。警視庁はこの映画のシナリオ本を告訴して1977年から1982年まで争うが、無罪となる。2000年(平成12)に「完全ノーカット版」がリバイバル上映。大島の名を世界に知らしめた傑作。
[坂尻昌平]
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