映画監督。昭和7年3月31日、京都市左京区吉田町に生まれる。京都大学法学部卒業後、松竹に助監督として入社、1959年(昭和34)に監督第一作『愛と希望の街』を発表。翌1960年には、『青春残酷物語』と『太陽の墓場』のヒットにより日本映画の新しい波(松竹ヌーベルバーグ)のリーダーとなる。この勢いに乗って、『日本の夜と霧』を製作。これは新旧両派の左翼青年たちが、その年の最大の政治問題だった日米安全保障問題について激論を闘わせるという、かつてない政治映画であった。この作品の公開中に社会党委員長浅沼稲次郎の暗殺事件が起こり、松竹はこの作品の上映をただちに中止した。理由は観客が来ないからということであったが、大島渚は、不穏な事態のため裏で政治的な圧力があったのではないかと、松竹に抗議した。この事件で対立したことがもとで、翌年には大島渚と彼に同調する人々は松竹を辞め、独立プロダクション創造社を設立する。以後、映画産業自体が衰退する厳しい状況のなかで、テレビ番組やアート・シアター・ギルドの低予算芸術映画、さらには外国資本による国際的な映画製作など、次々に新機軸を打ち出すことで、日本映画の新しい動きの先頭に立ち続けた。
まず、テレビのドキュメンタリーでは、街頭で物ごいをしている傷痍(しょうい)軍人の多くが在日朝鮮人であり、そのために日本政府からも韓国政府からも保障を得られない人々であるという発見から、日本人の良心を痛切に告発する『忘れられた皇軍』(1963)を発表。映画では、低予算を逆手にとった前衛的な手法により、死刑制度を弾劾する『絞死刑』(1968)をつくって、国際的に注目される存在になった。1976年の『愛のコリーダ』は、日本では撮影はできても現像ができない性表現のあるフィルムを、出資国のフランスで現像編集するという方法で製作した大作で、芸術的に高く評価された最初のポルノ映画といわれ、世界的に大ヒットした。ほかにも、『白昼の通り魔』(1966)、『少年』(1969)、『儀式』(1971)、『戦場のメリークリスマス』(1983)などの傑出した映画をつくり、一作ごとに国際的に注目された。平成25年1月15日没。
[佐藤忠男]
明日の太陽[短篇](1959)
愛と希望の街(1959)
青春残酷物語(1960)
太陽の墓場(1960)
日本の夜と霧(1960)
飼育(1961)
天草四郎時貞(1962)
小さな冒険旅行(1963)
私はベレット(1964)
悦楽(1965)
ユンボギの日記(1965)
白昼の通り魔(1966)
忍者武芸帳(1967)
日本春歌考(1967)
無理心中 日本の夏(1967)
絞死刑(1968)
帰って来たヨッパライ(1968)
新宿泥棒日記(1969)
少年(1969)
東京戦争戦後秘話 映画で遺書を残して死んだ男の物語(1970)
儀式(1971)
夏の妹(1972)
愛のコリーダ(1976)
愛の亡霊(1978)
戦場のメリークリスマス(1983)
マックス、モン・アムール(1986)
御法度(1999)
『田中千世子編『大島渚』(1999・キネマ旬報社)』▽『大島渚著『人間の記録137 大島渚――大島渚1960』(2001・日本図書センター)』▽『樋口尚文著『大島渚のすべて』(2002・キネマ旬報社)』▽『四方田犬彦他編『大島渚著作集』全4巻(2008、2009・現代思潮新社)』▽『四方田犬彦著『大島渚と日本』(2010・筑摩書房)』▽『佐藤忠男著『大島渚の世界』(朝日文庫)』
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(2013-1-17)
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…《愛と希望の街》(1959)に続く大島渚(1932‐ )監督の第2作目の映画。1960年6月,安保闘争のさなかに公開され,伝統的な映画会社松竹の若い監督が反逆的青春を描いたということから,7月公開の吉田喜重監督《ろくでなし》とともに,〈松竹ヌーベル・バーグ〉と呼ばれ,以後,輩出する若手・新人監督の活躍を総称した〈日本ヌーベル・バーグ〉の代表作とされるに至ったが,当の大島はたんに暴力とセックスに着目したその風俗的呼称に激しく反駁(はんばく)した。…
…次いで,野村芳太郎(《鳩》1952),小林正樹(《息子の青春》1952)らの新人監督や川喜多雄二,水原真知子,北原三枝らの人気スターが生まれた。大島渚(1932‐ )監督の処女作《愛と希望の街》(1959)も〈シスター映画〉として製作され,新人監督の腕だめしのチャンスになったという点でも〈シスター映画〉の意義は大きい。そして〈シスター映画〉が製作され始めた52年から日本映画は本格的な〈2本立て興行〉に突入,東映が〈東映娯楽版〉の名の下に54年から打ち出した中編もの,《笛吹童子》三部作(1954),《紅孔雀》五部作(1954‐55)等々の大ヒットを経て,〈プログラム・ピクチャー〉の全盛時代を迎えることになる。…
※「大島渚」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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