回避できないアレルゲンによってひき起こされるアレルギー性疾患に対する特殊な治療法。抗原物質に対して過敏な状態にすることを〈感作sensitization〉といい,その過敏性を除去する処置を〈減感作〉(かつては除感作,脱感作といった)という。減感作療法はこの方法を用いたものである。アレルギー性疾患の治療の原則は,病気の原因となっているアレルゲンを回避することである。しかし室内塵や花粉などのように,どうしても回避できないアレルゲンもあり,これらに対して用いられる。減感作療法は,19世紀末に発達したワクチン療法や抗毒素療法の考え方をヒントに,1900年アメリカのカーティスCurtisが花粉症の患者に花粉抽出液の注射を試みたのが初めである。10年にはイギリスのヌーンNoonが,花粉の抽出液を少量から漸次増量して注射する治療法を多数の患者に計画的に試み,かなりの好成績をあげた。それ以来この方法は世界各国で用いられるようになった。方法は,皮膚反応などから患者の敏感度を確かめた後,反応を起こさないごく薄い濃度の抗原液の注射から始め,週に1ないし2回注射しながら注射量を漸次増量していき,注射局所に発赤・腫張が現れるようになった濃度の注射量を維持量として,これより以上増量しないでしばらく同じ量を注射する。やがて週に1回の注射から2週に1回,やがて4週に1回の注射にして,2~3年注射を続ける。50~70%の治療効果がある。しかし注射量を誤ると,ときに症状の悪化を起こしたり,アナフィラキシー・ショックを起こすことがある。最近ではこのような副作用を起こさないで,しかもより有効な治療法の開発を目指して,抗原を変性させたり,重合させたり,また他の物質と結合させたりする方法が動物実験で試みられ,一部はヒトにも応用されている。減感作療法が有効であるのは,(1)遮断抗体と呼ばれる新しい抗体が産生され,病気を起こす抗原と結合する,(2)抗原抗体反応にもとづくヒスタミンの遊離が低下する,(3)血中のレアギン(IgE抗体)が減少する,ということによると指摘されている。ただ新しい薬剤や治療法の開発により,減感作療法は以前ほどには広く用いられなくなってきた。
→アレルギー
執筆者:宮本 昭正
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…次に一般臨床検査,免疫学的検査,病巣感染検査,物理学的検査,負荷試験,スクラッチテスト,性格検査などが行われる。こうして病因が確定すればその除去が根本となるが,食物,薬剤などの原因物質を避けることが比較的容易であるのに対して,吸入性抗原などはそれが困難であり,従来は特異的減感作療法が施行されていた。しかしながら,この方法は,まれに重篤な反応(ショック)をひき起こすことなどにより,現在では再検討されつつある。…
…一方,目的とする抗原(アレルゲン)に対する免疫反応が人体にとって不利益な反応(アレルギー)をもたらす場合には,このような免疫反応の減弱を目標として少量のアレルゲンを徐々に増量していく治療法が行われている。これは減感作療法あるいは脱感作療法と呼ばれ,気管支喘息(ぜんそく),花粉アレルギー,一部の薬剤アレルギーなどに対して行われている。(2)受動免疫療法は人体のもっていない特異抗体を補充投与する治療法で,細菌や他の生物由来の毒素に対する抗毒素の投与が行われている。…
※「減感作療法」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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