ニュートンの運動法則が成り立つ座標系を慣性系という。ニュートンの運動の第二法則によれば、質点に力を加えたときに生じる加速度は、力を質量で割ったものに等しい。加速度は、基準とする座標系のもとで測った質点の速度の時間変化であるから、もし、基準とする座標系自身が加速度を有していれば、得られた質点の加速度の大きさも当然異なってくる。したがって、ニュートンの運動法則が成り立つのは、ある特定の座標系を基準にした場合である。この座標が慣性系であって、慣性系からみれば、外力を受けない質点は等速度で運動している。また、慣性系に対して一定の速度で移動する座標系からみても、質点の加速度は変わらないから、このような座標系も慣性系である。二つの慣性系、(x、y、z)座標系と(x'、y'、z')座標系の間の変換は、ガリレイ変換とよばれる。
地球に固定した座標系は、粗い近似では慣性系であるが、実際は地球の自転のため慣性系に対して回転している回転座標系である。このため地球に固定した座標系で観察すれば、振り子の振動面はゆっくりと回転する。恒星に固定した座標系はほぼ慣性系である。
[田中 一]
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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…慣性系ともいう。運動の第1法則(慣性の法則),すなわち〈物体に力が働かなければ,初め静止していた物体はいつまでも静止し,運動していた物体はいつまでもその速度を保って等速直線運動を続ける〉が成り立つ座標系。…
…これがアインシュタインをして現代でももっとも魅力ある物理学者の一人たらしめている原因であろう。ここではまず座標変換,慣性系など,相対性理論の理解のための予備知識の説明から始め,次いで特殊相対性理論,一般相対性理論について概説したい。アインシュタイン
【運動の相対性と座標変換】
およそ運動とは,すべて,〈何か〉に対する運動として記述される。…
※「慣性系」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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