2個の運動する物体があるとき、それらの間の相対的運動。そのうち1個を観測者とすれば、相対運動は、その観測者から見た他の1個の運動となる。物体の運動を論じるためには、まず、基準となる座標系(基準系)を決めなければならない。運動はすべて、この基準系から見たときの相対的な運動(相対運動)として考えることができる。つまり、同一物体に関する相対運動でも、基準系が異なれば、異なって見えることになるから、相対運動は基準を指定して初めて意味をもつ。たとえば、それぞれ時速40キロメートルと時速60キロメートルで同じ向きに走っている二台の自動車A、Bを考える。自動車A(この自動車とともに運動している座標系)から見れば、自動車Bは、時速60キロメートルではなく20キロメートルに見える(ただし速度が光の速度に近い場合は、アインシュタインの特殊相対性理論により、速度の単純な引き算は成り立たない。「特殊相対性理論」の項参照)。そもそも時速40キロメートルおよび60キロメートルは、それぞれ地上に静止している人を基準にした自動車A、Bの相対速度である。
物理学では、しばしば力を及ぼし合う二つの粒子の運動を考察する。力が万有引力のように相対位置座標にのみ依存するとき、全系の運動は、全系の重心の運動と一方の粒子から見た他方粒子の相対運動に分けられる。重心の運動は、力の作用がなく等速運動をするので、問題は、相対運動を解くことに帰着させられる。ただし、相対運動に対する見かけの質量は換算質量とよばれ、二つの粒子の質量をm1、m2とすればm1m2/(m1+m2)で与えられる。
[阿部恭久]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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