ガリレイ変換(読み)がりれいへんかん(英語表記)Galilean transformation

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ガリレイ変換」の意味・わかりやすい解説

ガリレイ変換
がりれいへんかん
Galilean transformation

ニュートン力学の基本法則が成り立ち、互いに等速度運動をしている二つの座標系の間の関係式(変換)。ニュートンの第一法則は、物体はなんの作用も受けないならば、等速直線運動を続けると表される。これは慣性の法則ともよばれ、これが成り立つ座標系を慣性系という。互いに等速直線運動をする二つの座標系においては、力学の法則は同一である。このような慣性系は無限に多く存在し、それらが力学的に同等であることは、他の慣性系に対して特別な意味をもつ絶対基準系が存在しないことを意味する。これが、ニュートン力学(古典力学)におけるガリレイ相対性原理である。宇宙空間を高速で動く地表の構造物がなぜ安定に存在するかは説明を要するが、ガリレイの相対性原理はこれに対して論理的根拠を与えたのである。空間点の位置をxyz座標で記すK系とx'y'z'座標で記すK'系を二つの慣性系とする。この二つの系を関係づけるガリレイ変換は、たとえばK'がKx軸に沿って一定の速度Vで運動しているとき、同一の質点の位置座標の間で、
  x'=xVty'=yz'=z
と表される。この場合、時間経過は両方の慣性系で同じ、すなわち時間は変換で不変(t'=t)という絶対時間の仮定を置いている。

 Vの大きさが光速に比して無視できないくらいに大きくなると、前記の仮定は成り立たず、時間もまた変換を受ける。すなわち、ガリレイ変換は特殊相対性理論ローレンツ変換にとってかわられるべきものである。換言すれば、ガリレイ変換は、ローレンツ変換における相対速度Vが光速に比して非常に小さい極限として成り立つ。

[玉垣良三]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ガリレイ変換」の意味・わかりやすい解説

ガリレイ変換
ガリレイへんかん
Galilei transformation

ニュートン力学において,2つの慣性座標系の間の座標変換式。慣性系 I に対し慣性系 I' が等速度 v で動くとき,両系の座標原点に関し任意の空間点Pの位置ベクトルrr' ,両系ではかった時間を tt' とし,両座標原点が一致した時刻をそれぞれの時間の原点にとるとき ( tt'=0 ) ,両系の位置ベクトルおよび時間に対する次の変換関係式がガリレイ変換である。

r'=rvtt'=t

特に各慣性系に座標軸が互いに平行な直角座標系をとり,速度 v の方向は x 軸および x' 軸の方向であるとする。点Pの直角座標 xyz および x',y',z' は位置ベクトル r および r' の成分であるから,前式は座標の変換式 x'=xvty'=yz'=zt'=t と書ける。これをガリレイ変換ということが多い。ニュートンの運動方程式はこの変換に関し形を変えないので,両慣性系は力学的に同等であり,これをニュートン力学ではガリレイの相対性原理が成り立つという。これに反し電磁気学基礎方程式はガリレイ変換に対し形を変えるので,形を変えない座標変換式としてローレンツ変換が導き出された。ローレンツ変換は特殊相対性理論の基礎をなす座標変換式である。

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