運動の法則(読み)ウンドウノホウソク

デジタル大辞泉 「運動の法則」の意味・読み・例文・類語

うんどう‐の‐ほうそく〔‐ハフソク〕【運動の法則】

ニュートンが確立した、運動に関する基本的な三法則。(1)第一法則。静止または等速直線運動中の物体は、外から力を受けないかぎり、その状態を続ける(慣性の法則)。(2)第二法則。運動の変化(加速度)は、加えられる力と同じ方向に起こり、力の大きさに比例し、物体の質量に反比例する(ニュートンの運動方程式)。(3)第三法則。物体が他の物体に力を及ぼすとき、他の物体から同じ大きさの逆向きの力を受ける(作用反作用の法則)。

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精選版 日本国語大辞典 「運動の法則」の意味・読み・例文・類語

うんどう【運動】 の 法則(ほうそく)

  1. 物体の運動に関する基本的な法則。ニュートンにより、運動の三法則として一般的な形にまとめられた。第一法則、静止あるいは等速度運動中の物体は外力が加わらないかぎりその状態を続ける(慣性の法則)。第二法則、物体の加速度は加わる力の大きさに比例し、物体の質量に反比例する。第三法則、二つの物体が相互に及ぼす力は大きさが等しく、方向は反対(作用反作用の法則)。ニュートンの運動法則。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「運動の法則」の意味・わかりやすい解説

運動の法則
うんどうのほうそく

物体の運動についてニュートンが発見した三つの法則のことで、ニュートンの運動法則ともいう。運動一般のなかには、単に物体の位置の変化に限らずそれ以外のものがあるが、運動の法則といえば通常ニュートンの運動法則を意味する。

田中 一]

物体の運動のとらえ方――ニュートン以前

中世にあっては、聖書とアリストテレスの自然学にのみ基づいて天体と地上の物体の運動を論ずるのが普通であった。その結果、大地は不動であって天体が運行し、その運動は円環的で、かつ地上の物体はそれがなんらかの力を受けているときにのみ運動していると考えられていた。これに対して、天体の運行の法則をその精密な観測のもとにみいだすべきであると考え、膨大な量の観測を行ったのがティコ・ブラーエで、その観測データを高い数学的能力によって巧みに整理し、いわゆるケプラーの三法則にまとめたのがケプラーである。

 ガリレイもまた、観察された事実にのみよりどころを求めながら物体の運動法則に論理的考察を加えて、物体が力の作用を受けないときには慣性運動を行うことを論証し、また放物体の運動の法則をみいだした。しかし、ガリレイはまだそれまでの物体の運動に関する偏見のとりこになっていた点もあって、たとえば慣性運動を円運動とみて、かならずしも直線運動とは考えなかった。また重力についての認識も欠いており、落下運動を自然運動と受け取った。これに対してニュートンは、ケプラーの法則からこの運動をもたらすものとして万有引力を発見し、落下運動も引力の作用によって生じた加速度運動としてとらえた。さらに、慣性運動が直線運動であることを示し、運動の法則を3法則にまとめ、これから多くの結論を引き出した。

[田中 一]

運動の第一、第二、第三法則

ニュートンの運動法則は三つの法則から成り立っており、それぞれ運動の第一、第二、第三法則とよぶ。

 第一法則 すべての物体は、その静止の状態を、あるいは直線上の一様な運動の状態を、外力によってその状態を変えられない限り、そのまま続ける。

 第二法則 運動量(運動)の時間的変化(変化)は及ぼされる外力(起動力)に比例し、その力の及ぼされる方向に行われる。括弧(かっこ)内はニュートンの用いた用語である。

 第三法則 2物体相互の作用は、つねに相等しく逆向きである。

 第二法則を微分方程式の形で書き表せば、dp/dtFとなる。ここでpは物体の運動量、Fは物体に作用する外力である。運動量は物体の質量mとその速度vの積であって、質量が運動により変化しない場合にはm(dv/dt)=Fの形をとる。dv/dtは加速度a(速度の変化率)であって、物体の位置ベクトルrを用いて
  vdr/dt, adv/dtd2r/dt2
となるので、第二法則を
  m(d2r/dt2)=F, maF
の形に書くこともできる。運動の第二法則を数学的に表現したこれらの微分方程式を運動方程式という。

 運動の三法則の間には互いに密接な関係があるが、各法則はそれぞれ独立な内容を有している。第一法則(慣性の法則)は、外力の作用を受けない物体が等速度で運動するようにみえる座標系、すなわち慣性系の存在を示す。ニュートン以前には、物体がなんらかの作用を受けない限り、静止するかあるいは円運動を続けるものと考えられることが多かった。慣性系に対し、一定の速度で動く座標系も同じく慣性系であるが、第一法則の示す限りでは、かならずしも両座標系の時間の進み方が同じでなければならないということはない。

 第二法則(運動の法則)は、運動量の変化の割合あるいは速度の変化の割合が外力によって与えられることを示すものであるから、この法則だけからは現実の運動は一義的に定まらない。現実の運動を定めるためには、任意の時刻の物体の位置のほかに、同時刻の速度(あるいは異なる時刻の速度か位置でもよい)を与えなければならない。第二法則が成り立つのは、第一法則がその存在を示した慣性系においてのみであって、第二法則はすべての慣性系に対して共通の時間のもとに同一形式の運動方程式の成り立つことを要請している。外力のない特別の場合として第二法則は第一法則を含んでいるようにみえるが、このことは、両法則が互いに矛盾しないことを示すものとみるべきであろう。

 第三法則(作用・反作用の法則)は、物体の運動が重心運動と各部分間の相対運動という独立な二つの運動に分離することを示す。任意の物体を断面によって二つの部分A、Bに分けたとき、もし、AからBへの作用の大きさよりもBからAへの反作用が大きいとすれば、外力の作用を受けていないにもかかわらず、この物体はBからAの方向に加速度運動を行う(重心運動)。実際には、作用と反作用との大きさが等しく方向が反対のため、これらの作用・反作用は物体全体の重心運動に影響をもたらさない。

[田中 一]

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百科事典マイペディア 「運動の法則」の意味・わかりやすい解説

運動の法則【うんどうのほうそく】

ニュートンが確立した,運動と力の関係を示す三つの基礎法則。(1)第1法則(慣性の法則)。物体は力を受けなければ,初め静止していたものはいつまでも静止しつづけ,初め動いていたものはその速度で等速直線運動をつづける。(2)第2法則(運動の法則)。加速度は物体に加えられた力の方向に生じ,その大きさは力の大きさに比例し,物体の質量に反比例する(つまり質量と加速度の積は作用する力に等しい)。(3)第3法則(作用反作用の法則)。物体Aが物体Bに力(作用)を及ぼすと,AはBから同じ大きさで逆向きに働く力(反作用)を受ける(つまり作用,反作用は,2物体を結ぶ直線に沿って逆向きに働き,大きさは等しい)。 以上は質点の運動に関する法則だが,広がりをもつ物体(剛体)も質点の集合とみなすことができ,それらの運動の法則もこの3法則から導かれる。→慣性モーメント
→関連項目運動(物理)解析力学慣性質量プリンキピア力学

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「運動の法則」の意味・わかりやすい解説

運動の法則
うんどうのほうそく
law of motion

物体の運動の様子を決める基本法則。普通はニュートンの運動の法則をいい,次の3法則にまとめられている。第一法則 (慣性の法則 ) では,力を受けない物体は静止または等速度運動をするとし,第二法則 (ニュートンの運動方程式 ) では,物体に力が働くと,力の向きに,力の大きさに比例した速度の変化 (加速度) を生じるとし,第三法則 (作用反作用の法則 ) では,2つの物体が互いに及ぼし合う作用と反作用は,大きさが等しく,逆向きで,2物体を結ぶ方向に働く,としている。この法則は質点の運動に関するものであるが,大きさをもつ物体の複雑な回転運動,流体の運動,弾性体の振動,熱現象もこの法則から導かれる。ニュートンの法則は数学的に整備されて,種々の力学原理の形で述べられてもいる。また,物体の速さが光の速さに近いほど大きくなると,運動の法則は少し変更を受けて,物体の運動は相対論的力学で論じられる。

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法則の辞典 「運動の法則」の解説

運動の法則【laws of motion】

通常はニュートンの運動の法則*のことをいう.

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世界大百科事典(旧版)内の運動の法則の言及

【運動】より

…しかしこの座標系では見かけの力を考慮しなければならないため,力学の立場からは必ずしも便利ではない。力学の立場では運動の法則が最も簡単な形をとる座標系,すなわち慣性座標系(慣性系)を用いるのが望ましい。ふつうわれわれが地上の物体の運動に対して用いる地上に固定した座標系はこの慣性系に十分近いことがわかっている。…

【物理学】より

… こうして慣性概念の確立をみたところから,第3の,そしておそらくはもっとも重要な運動法則の定式化が生まれる。ニュートンの手によって行われ,ニュートンの運動の(第2)法則と呼ばれるようになったこの定式化は,周知のようにfmα(mは物体の質量,fは加えられた力,αは生じた加速度)という形をもち,アリストテレスの強制運動におけるPWVという形と比較すると,外力が運動(つまり速さ)を生ずるのでなく,運動の変化(つまり加速度)を生ずると考えられている点に最大の新しさがある。この新しいニュートンの運動法則を土台にして,近代物理学のみならず,自然科学全体を律するような自然観が誕生した。…

【法則】より

…一般には,単なる統計上の規則性を超えて,より確固たる基盤の上に立てられたと考えられる秩序について用いられる語。ただし確固たる基盤を何に求めるかによって,法則についての解釈も異なることになる。ヨーロッパの伝統のなかでは,その基盤が神にゆだねられていたことは,ヨーロッパ語で〈法則〉を表す語が,どれも受動態で〈(秩序正しく)置かれたもの〉という原義をもち,それゆえ,能動者としての神がその背後に前提されている事実からも明瞭である。…

※「運動の法則」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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