慣性系ともいう。運動の第1法則(慣性の法則),すなわち〈物体に力が働かなければ,初め静止していた物体はいつまでも静止し,運動していた物体はいつまでもその速度を保って等速直線運動を続ける〉が成り立つ座標系。この法則の前半は日常の経験と矛盾しないし,後半も水平な床の上を運動する物体について,できるかぎり摩擦を少なくするくふうをして水平方向には力が働かないようにすれば確かめることができる。したがって,われわれがこのとき用いている地球上に固定した座標系は近似的に慣性系であるということができる。しかしこれが厳密な意味での慣性系でないのは,例えば次のフーコーの振子の実験から知ることができる。十分長い糸におもりをつけて鉛直面内で振らせると振子の振動面が北半球では時計の針の進行方向にゆっくり回っていく。慣性系なら鉛直な振動面に対して直角な方向の力は働いていないので,このようなことは起こりえないはずである。実際これは地球の自転のせいで,地球上の座標系がほんとうの慣性系に対して回転していることを示す。現在慣性系と考えられているのは,原点が太陽系の質量の中心にあり,座標軸が恒星のつくる天球に対して決まった方向に向いているような座標系である。しかし厳密には恒星も互いに運動しているのだから上のような決め方も近似的なものといわざるをえない。
一つの慣性系に対して一定の速度で相対運動をしているような系も慣性系の資格をもっている。これらの系を結びつける座標変換がガリレイ変換である。ニュートンの運動方程式はどの慣性系でも同じ形をとる。これを運動方程式がガリレイ変換に対して不変であるといい,ガリレイの相対性原理と呼ぶことがある。一方,電磁気学の基礎方程式(マクスウェルの方程式)がローレンツ変換に対して不変であることが特殊相対論を導くきっかけになったが,電磁気学での慣性系もやはり互いにローレンツ変換で結びつき,そこでマクスウェルの方程式が成り立つような座標系といってよい。現在ではニュートンの運動方程式もローレンツ変換に対して不変な形に修正されている。しかしここまでの範囲ではとにかく慣性系という特殊な座標系が存在することが仮定されており,しかもこれをどのように定めるかについては前に述べたようなあいまいさが避けられない。考えてみると慣性系の定義は力が働かないとき等速直線運動をする系ということになっているが,力の働いていないことをどうやって知るかというと,等速直線運動の存在から知ることになる。しかしそれなら,例えば人工衛星上で無重力状態にある観測者は,自分の座標系を慣性系と考えるであろう。このような事実の反省からA.アインシュタインにより,どんな運動座標系に対しても同じ形に物理法則を書き表すことができなければならないという相対性原理に基づく一般相対論がつくられることになった。
→相対性理論
執筆者:田辺 行人
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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