慣性座標系(読み)かんせいざひょうけい(英語表記)inertial frame of reference; inertial system

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

慣性座標系
かんせいざひょうけい
inertial frame of reference; inertial system

慣性系,惰性系ともいう。ニュートンの運動方程式 maf ( m は質量,a は加速度,f は力) が成り立つ座標系。慣性系と呼ばれるのは,この系では力が働かないときに速度は変化しないので,物体が慣性をもつとみなせるからである。ある慣性系に対し等速度で並進運動する座標系もまた慣性系であって,互いにガリレイ変換で結ばれる。これらの慣性系同士は力学的に互いに区別できない。これをニュートン力学ではガリレイの相対性原理が成り立つという。慣性系と非慣性系とは力学的な観測によって区別でき,恒星系に固定した座標系は近似的に慣性系であることが知られている。慣性系同士を光学的または電磁気的に互いに区別して特定の絶対的な慣性系を見出そうとの考えから,光や電磁場の媒質として仮定されたエーテルの静止系を絶対慣性系と想定したが,その想定はマイケルソン=モーリーの実験によってくつがえされ,エーテルの存在そのものを否定するアインシュタイン特殊相対性理論が生み出された。この理論では,電磁気学の基礎法則であるマクスウェルの方程式が成り立つ座標系を慣性系と呼ぶ。ニュートン力学と同様に,ある慣性系に対し等速度で並進運動する座標系もまた慣性系であるが,それらは互いにローレンツ変換で結ばれ,互いに光学的または電磁気的に区別されない。これを電磁気学ではアインシュタインの相対性原理が成り立つという。ニュートン力学と電磁気学とで別の相対性原理が成り立ち,慣性系同士を結ぶ変換が違うのであるから,同じ慣性系と呼ばれても両者の慣性系は違ったものであった。しかし,ニュートン力学が高速度で運動する物体については正しくないことが明らかとなって相対論的力学へと修正されたので,力学と電磁気学とは共通の慣性系をもつようになった。慣性系はすべての座標系のなかでは特殊な系であるが,物理法則ではこのような特殊な座標系があるのは望ましくない。そこでアインシュタインは,すべての座標系を完全に同等に扱った一般相対性理論を展開して,慣性系のような特殊な座標系を排除した。

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世界大百科事典 第2版の解説

かんせいざひょうけい【慣性座標系 inertial system】

慣性系ともいう。運動の第1法則(慣性の法則),すなわち〈物体に力が働かなければ,初め静止していた物体はいつまでも静止し,運動していた物体はいつまでもその速度を保って等速直線運動を続ける〉が成り立つ座標系。この法則の前半は日常の経験と矛盾しないし,後半も水平な床の上を運動する物体について,できるかぎり摩擦を少なくするくふうをして水平方向には力が働かないようにすれば確かめることができる。したがって,われわれがこのとき用いている地球上に固定した座標系は近似的に慣性系であるということができる。

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