慶庵(読み)けいあん

精選版 日本国語大辞典 「慶庵」の意味・読み・例文・類語

けいあん【慶庵・慶安・桂庵】

  1. 〘 名詞 〙 ( 江戸時代、承応一六五二‐五五)の頃、江戸京橋に住む医者大和慶庵が、縁談などを巧みに取りまとめたところから )
  2. 縁談や訴訟などの仲立ちをする人。また、雇人奉公人の口入れを業とする者。また、その家。口入屋。請宿(うけやど)
    1. [初出の実例]「夫遊民ども、渡世のために慶安(ケイアン)と云中間(なかま)あり」(出典:子孫鑑(1667か)中)
    2. 「江戸と云ふ所は桂庵と云ふものがあって、奉公人の世話をするそうだが」(出典:塩原多助一代記(1885)〈三遊亭円朝〉九)
  3. ことば巧みにお世辞や追従(ついしょう)を言うこと。また、その人。
    1. [初出の実例]「江戸のけいあん都のたくせんが弁舌たらたらいふて聞ありき」(出典:浮世草子・好色床談義(1689)三)

けいわん【慶庵】

  1. 〘 名詞 〙 「けいあん(慶庵)」の変化した語。
    1. [初出の実例]「けけらけいわんててんがう、今時その手を喰(く)んべいか」(出典:歌謡・松の葉(1703)四・寛濶一休)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「慶庵」の意味・わかりやすい解説

慶庵
けいあん

職業周旋屋の俗称桂庵とも書く。江戸~大正時代の用語。一般には口入(くちい)れ屋と称し、明治以後は雇人請宿(やといにんうけやど)などと公称した。語源としては、17世紀中ごろに慶庵という医者が諸事の仲介をしたのに始まるという説と、慶庵という名の医者が軽薄な追従(ついしょう)を使ったのを周旋人仲人(なこうど)口にかけていい始めたという説とがある。初めは、縁談や訴訟の仲裁などをも扱ったというが、のちには奉公人の斡旋(あっせん)に限られた。

[原島陽一]

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