懐かしい(読み)ナツカシイ

デジタル大辞泉 「懐かしい」の意味・読み・例文・類語

なつかし・い【懐かしい】

[形][文]なつか・し[シク]《動詞「なつ(懐)く」の形容詞化
心がひかれて離れがたい。
㋐魅力的である。すぐそばに身を置きたい。
「三蔵は少し葉蔭になっている他の(牡丹ノ)一輪を―・く見る」〈虚子俳諧師
「霞立つ長き春日をかざせれどいや―・しき梅の花かも」〈・八四六〉
好感がもてて近付きになりたい。親しくしたい。
目鼻立の好い男は、…、利いた風で―・くない」〈鴎外
かつて慣れ親しんだ人や事物を思い出して、昔にもどったようで楽しい。「30年振りに―・い顔ぶれがそろった」「遠い昔が―・く思い出される」
引き寄せたいほどかわいい。いとおしい。
気配、姿、みめありさま、かうばしく―・しき事限りなし」〈宇治拾遺・六〉
衣服などがなじんで着ごこちがよい。
「―・しき程の直衣に」〈夕霧
[派生]なつかしがる[動五]なつかしげ[形動]なつかしさ[名]
[類語]慕わしい恋しいゆかしい物懐かしい

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「懐かしい」の意味・読み・例文・類語

なつかし・い【懐】

  1. 〘 形容詞口語形活用 〙
    [ 文語形 ]なつか〘 形容詞シク活用 〙 ( 動詞「なつく(懐)」の形容詞化。古くは、身近にしたい、馴れ親しみたいの意を表わし、後世、多く懐旧の思いをいうようになる )
  2. [ 一 ] 心がひかれ、離れたくないさま。愛着を覚えるさま。魅力的だ。慕わしい。
    1. (イ) 人、人の心や姿をはじめ、音・香などを含め、広い対象についていう。
      1. [初出の実例]「秋さりて 山辺を行けば 名津蚊為(なつかし)と 我れを思へか 天雲も 行きたなびく」(出典万葉集(8C後)一六・三七九一)
      2. 「御心ばへいとなつかしう、おいらかにおはしまして、世の人いみじう恋申めり」(出典:大鏡(12C前)一)
    2. (ロ) 衣服が、着馴れて程よくのり気がとれて、からだになじんでいるさま。
      1. [初出の実例]「なつかしき程の直衣に、色こまやかなる御衣(ぞ)のうち目」(出典:源氏物語(1001‐14頃)夕霧)
  3. [ 二 ] ( 中世以後に生じた意味 ) 過去の思い出に心がひかれて慕わしいさま。離れている人や物に覚える慕情についていう。
    1. [初出の実例]「雁金のかへりゆく、天路をきけばなつかしや」(出典:光悦本謡曲・羽衣(1548頃))
    2. 「幾年なつかしかりし人々の」(出典:俳諧・続猿蓑(1698)上・今宵賦(支考))

懐かしいの派生語

なつかし‐が・る
  1. 〘 他動詞 ラ行五(四) 〙

懐かしいの派生語

なつかし‐げ
  1. 〘 形容動詞ナリ活用 〙

懐かしいの派生語

なつかし‐さ
  1. 〘 名詞 〙

懐かしいの派生語

なつかし‐み
  1. 〘 名詞 〙

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

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