イギリスの20世紀の代表的な作曲家ブリテンの晩年の作品(作品番号66)。第2次世界大戦の空襲で破壊されたコベントリー大聖堂の新築記念のために作曲し,1962年5月30日,ブリテン自身の指揮,フィッシャー・ディスカウその他のソロ,バーミンガム市立交響楽団によって初演された。作品の編成は,ブリテンの作品のなかでも最も大規模なものの一つで,ソプラノ,テノール,バリトンのソロ,混声合唱,少年合唱,室内オーケストラ,大オーケストラ,オルガンよりなる。作品全体の形式は,レクイエム・エテルナム,ディエス・イレ,オッフェルトリウム,サンクトゥス,アニュス・デイ,リベラ・メという伝統的なミサの形式による。ブリテンは,このミサのラテン語と,第1次世界大戦で戦死したW.オーエンWilfred Owenの英語の反戦詩を用い,劇的な手法を最大限に生かして,戦争の悲劇をダイナミックに表現している。
執筆者:船山 隆
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
イギリスの作曲家ベンジャミン・ブリテンのレクイエム。第二次世界大戦で破壊されたイギリスのコベントリー大聖堂の再建献堂式(1962)のために作曲された。単に死者の霊を慰める音楽ではなく、戦争という悲劇を二度と繰り返すまいとする願いと誓いが歌われている。歌詞には、通常のレクイエムに用いられるラテン語の典礼文以外に、イギリスの詩人W・オーウェンの詩も使い、全体は六楽章からなる。〔1〕典礼文を歌うソプラノ独唱・混声合唱・管弦楽、〔2〕オーウェンの詩を歌うテノール独唱・バリトン独唱・室内管弦楽、〔3〕ステージの最奥で典礼文の一部を歌う児童合唱、という三つのグループからなる編成で、ブリテンの音楽の集大成ともいえる大規模な作品である。日本初演は1965年(昭和40)。
[三宅幸夫]
…最後の《ベニスに死す》(1973)に至るまでの14作のオペラは世界各国で上演されており,56年来日した際に鑑賞した能《隅田川》に基づく《カーリュー・リバーCurlew River》(1964)など小編成のオペラにも特色を発揮している。オペラ以外でも《青少年のための管弦楽入門――パーセルの主題による変奏曲とフーガ》(1945),《戦争レクイエム》(1961)なども世界的に演奏されている。その作風は,技巧的には折衷的であるが,現代に訴えかける内容と巧妙な表現力によって広い音楽公衆をひきつける魅力をそなえている。…
※「戦争レクイエム」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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