市民ケーン(読み)しみんけーん(英語表記)Citizen Kane

日本大百科全書(ニッポニカ) 「市民ケーン」の意味・わかりやすい解説

市民ケーン
しみんけーん
Citizen Kane

アメリカ映画。1941年作品。製作・監督・共同脚本・主演オーソン・ウェルズ。「バラのつぼみ」ということばを残して死んだアメリカの新聞王チャールズ・フォスター・ケーン(オーソン・ウェルズ)の生前を調査するにつれて、怪物的成功者であった大物素顔が浮かび上がってくる。結局「バラのつぼみ」は、ケーンが幼いころに愛用した橇(そり)に刻まれていたことばだとわかり、権力をほしいままにふるまっていた大物の人間的孤独の深さが暗示される。ウェルズはこの映画撮影当時25歳の若さで、劇団を主宰して「神童」と注目される存在であった。新聞王W・R・ハーストをモデルにしたといわれるこの作品はウェルズ初監督の長編映画で、過去の時間を大胆に交錯させた構成、モンタージュを使わずに一画面だけで直截(ちょくせつ)な表現をねらったパン・フォーカス(全焦点)撮影など新しい手法を駆使して衝撃を与え、現在では世界映画史上屈指の名作としての評価を得ている。66年(昭和41)日本公開。

[品田雄吉]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「市民ケーン」の意味・わかりやすい解説

市民ケーン
しみんケーン
Citizen Kane

アメリカ映画。RKO 1941年作品。監督オーソン・ウェルズ。脚本ウェルズ,ハーマン・J.マンキウィッツ。主演ウェルズ,ジョゼフ・コットン,ドロシー・カミンゴア。世界映画史上の傑作の一つ。演劇や放送の分野ですでに鬼才ぶりを発揮していたウェルズが 25歳のときにつくった映画第一作。新聞王ウィリアム・ランドルフ・ハーストをモデルにしたといわれるケーンの死にぎわのことばの意味を探るため,彼の知人たちの記憶によってケーンの人間像が描き出されていく。ケーンの公的生活をニュース映画で,私的側面を知人たちの回想によって展開し,また撮影のグレッグ・トーランドの協力を得てパンフォーカスという奥行の深い撮影法を考え出した。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

今日のキーワード

マイナ保険証

マイナンバーカードを健康保険証として利用できるようにしたもの。マイナポータルなどで利用登録が必要。令和3年(2021)10月から本格運用開始。マイナンバー保険証。マイナンバーカード健康保険証。...

マイナ保険証の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android