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ある一つの抗生物質(抗菌性物質,化学療法剤)の作用は,普通は選択的であって,ある種の微生物あるいは,ある一群の微生物に対して作用を示す。抗生物質が作用するこのような抗菌作用の範囲,すなわち感受性微生物の範囲を抗菌スペクトルと呼ぶ。たとえばペニシリンやストレプトマイシンは,それぞれ主としてグラム陽性球菌およびグラム陰性杆菌に強い作用を示し,狭い抗菌スペクトルをもつ。一方,クロラムフェニコールやテトラサイクリンは,グラム陽性,陰性いずれの菌にも作用するほか,マイコプラズマ,リケッチア,クラミディアに至る広い細菌群に作用を示すので,広範囲(抗菌スペクトル)抗生物質と呼ばれる。狭い抗菌スペクトルを示す抗生物質は,その抗生物質が強く作用しない微生物では,微生物の代謝系によって分解されてしまうか,または,微生物表層での透過性が良くなく,微生物の体内に浸透しないものであると考えられる。
→抗生物質
執筆者:川口 啓明
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