室町時代に行われた勘合(かんごう)貿易の輸入品に対する一種の課税。遣明(けんみん)船帰国後、搭乗した商人の輸入品総額を国内価格で算定し、その10分の1を船の経営者が徴収した。経営者である幕府、守護大名、寺院などは富裕な商人を多く乗せて抽分銭を増やすことに心を配った。しかし1476年(文明8)堺(さかい)を発した遣明船以後、幕府船、細川船について堺商人が出航前にあらかじめ抽分銭額を請け負うようになった。経営者に対し輸入額のいかんにかかわらず、一隻につき3000~4000貫文の納入を契約している。そのほかでは一隻で1000貫文、2000貫文の例もみられる。このような請負制では経営者はしだいに名目的なものとなり、商人が経営の実権を握り、ことに堺商人が貿易を独占する傾向を強めた。
[池上裕子]
室町時代,貿易船に対する課税。収益の何割かを経営者である幕府・有力大名・寺社に納入する輸入収益税。中国元代初期に実施の例がある。遣明船については,帰航後に輸入した全貿易額の10分の1を徴収。物資は日本の相場に換算。和泉国堺商人が関与するようになると,抽分銭相当額を出航前に先納する請負制度が始まり,堺商人の経営独占化を促したが,大内氏の経営船では請負制は行われなかった。
出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報
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