拡散ポンプ(読み)カクサンポンプ(その他表記)diffusion pump

デジタル大辞泉 「拡散ポンプ」の意味・読み・例文・類語

かくさん‐ポンプ〔クワクサン‐〕【拡散ポンプ】

真空ポンプの一。容器中で水銀・油などの蒸気を高速で噴出させ、周囲の気体分子を巻き込ませて排気する。高度の真空が得られる。

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精選版 日本国語大辞典 「拡散ポンプ」の意味・読み・例文・類語

かくさん‐ポンプクヮクサン‥【拡散ポンプ】

  1. 〘 名詞 〙 ( ポンプは[オランダ語] pomp ) 真空ポンプの一つ。一定方向に流れる蒸気の噴流をつくり、高速度で噴出させることにより、周囲の気体分子をいっしょに運び出すようにしたもの。高真空が得られる。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「拡散ポンプ」の意味・わかりやすい解説

拡散ポンプ
かくさんポンプ
diffusion pump

10-1~10-6 Paのような高真空を得るために用いられる一種噴流ポンプ。補助真空ポンプによってある程度真空にされた円筒形容器の底部にある作動液 (通常は油) を外部から加熱して蒸発させて,これを特殊なノズルから噴出させ,これらの蒸気の噴流で気体分子を吸引して補助真空側に運び,噴流は外部から冷却された壁に衝突して液化して流下し,容器の底部に戻る。下部にたまった空気は補助ポンプで外部に押出す。この動作を繰返すことにより高真空が得られる。補助真空ポンプとしては油回転真空ポンプまたはメカニカルブースタが用いられる。作動液に油を用いる油拡散ポンプの場合,10~5Paの補助真空が必要である。拡散ポンプのすぐ上部の配気管に液体窒素などで冷却するトラップ部を設けてやると 10-6 Pa近くまでの高真空が得られる。作動液に水銀を用いた水銀拡散ポンプ (補助真空 500~100Pa,到達真空度 10-1 Pa) もある。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「拡散ポンプ」の意味・わかりやすい解説

拡散ポンプ
かくさんぽんぷ

真空ポンプの一種。とくに高真空をつくるのに用いられる装置である。補助真空ポンプによってある程度真空にされた容器内で、作動液(水銀またはアピエゾンなどの低沸点油)を加熱、蒸発させてノズルから噴出させ、周囲の気体分子をいっしょに運び出すようにしたものである。蒸気噴流は、冷却された壁に衝突して凝縮し、流下してボイラーに戻る。10-8mmHg程度の真空をつくることができ、原子物理学実験などに用いられる。

池尾 茂]


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化学辞典 第2版 「拡散ポンプ」の解説

拡散ポンプ
カクサンポンプ
diffusion pump

蒸気噴射ポンプうちで,最適作動圧力が0.1 Pa よりも低いところにあり,吸入気体が分子流となって噴流域に達する気圧範囲で用いるものを,とくに拡散ポンプという.作動範囲がより高いところで用いるエジェクターポンプと区別してよんでいる.すなわち,エジェクターポンプの吸入気体は,粘性流の状態でポンプの噴流域に達するように設計されている.拡散ポンプでは主として蒸気圧が低く,かつ熱分解を起こしにくい油を用いるが,油のかわりに水銀を用いたものは水銀拡散ポンプとよんでいる.初期の拡散ポンプは水銀だけを用いていたが,現在は水銀を用いることはかえってまれである.

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改訂新版 世界大百科事典 「拡散ポンプ」の意味・わかりやすい解説

拡散ポンプ (かくさんポンプ)

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世界大百科事典(旧版)内の拡散ポンプの言及

【真空ポンプ】より

…高速の流体を噴射してその周囲の気体や液体を吸引する装置をエゼクターejectorというが,蒸気噴射ポンプは流体として蒸気を用いたもので,機械運動部分がないのが特徴である。スチームエゼクター,油拡散ポンプ,水銀拡散ポンプなどがこの型式に入る。最後の物理・化学作用ポンプは,気体分子を物理的または化学的作用により捕集して真空を作るもので,容器中の気体分子をイオン化して電極で集積するイオンポンプをはじめ,ゲッター・イオンポンプ,クライオポンプなどがある。…

※「拡散ポンプ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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