指声(読み)サシゴエ

デジタル大辞泉 「指声」の意味・読み・例文・類語

さし‐ごえ〔‐ごゑ〕【指(し)声/差(し)声】

声明しょうみょう平曲へいきょくなどで、単純な節を速いテンポで唱する部分
謡曲サシのこと。

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精選版 日本国語大辞典 「指声」の意味・読み・例文・類語

さし‐ごえ‥ごゑ【指声】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 歌学・連歌で、少し節をつけてすらすらと歌や連歌を読みあげること。
    1. [初出の実例]「位署は如法微音也。静に指音に読也」(出典八雲御抄(1242頃)二)
  3. 謡曲の小段の名。サシ事と同じく、シテの謡い出しの部分にあるもの。現在のサシの一種拍子に合わないですらすら謡う。
    1. [初出の実例]「開口人出て、指し声より、次第一歌まで一段」(出典:三道(1423))
  4. 声明(しょうみょう)旋律の音の高さを示すこと。
    1. [初出の実例]「阿闍梨表白常途之時者、只指声徴音也」(出典:醍醐寺新要録(1620))

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改訂新版 世界大百科事典 「指声」の意味・わかりやすい解説

指声 (さしこえ)

日本音楽の用語。いくつかの分野で用いる。〈さしごえ〉ともいい,サシコエ,差声,刺声と書かれることもある。まず声明(しようみよう)では,講式論義,つまり語り物的な曲種において,あまり旋律的ではなく,シラビック(1音節に1音符があてられる声楽様式)に演唱する部分とその旋律様式をいう。ただし,実際の旋律は,声明の流派によって異なる。平曲でも,シラビックな演唱を基本とする特定の旋律様式による部分をいう。節物(ふしもの)に多く用いられ,この部分全体をさらさらとよどみなく運ぶが,音域が広い点や,段落部分にメリスマ的旋律(1音節に多数の音符があてられる装飾的声楽様式)が用いられるなどの点では,クドキ(口説)より音楽的効果が大きいといえる。能のサシコエは,謡の音階音の一つであるサシ上音の古称。あるいは謡事(うたいごと)のひとつとしてのサシの古称,または別称である。世阿弥時代においては,サシゴトともいったが,両者区別は必ずしも明確ではない。現在ではサシの中でも特定のもの,たとえばクセの前に置かれるサシ以外のサシをサシコエと称する立場がある。
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