雅楽,舞楽の曲名。舞楽を行うとき最初に舞われるもの。振舞,延舞,厭舞とも書く。左方舞人1人と右方舞人1人によって舞われる。まず,左方舞人が舞台に出て鉾を3度振って退場(一節),次に右方舞人が同じことをくり返し(二節),最後に左右舞人2人が同時に舞台に登り,3度鉾を振って退場する(三節)。左方,右方とも襲(かさね)装束(常装束とも)に鳥甲(とりかぶと)をかぶり,片肩袒(かたかたぬぎ)で,鉾を持つ。周の武王が殷を討つために商郊の野で天地の神に祈ったという故事に由来し,3度振る鉾は天の神,地の神,先霊に祈るためという。現在は舞台を浄める意味で最初に舞われる。笛・太鼓・鉦鼓のみで伴奏する。演奏次第は,一節では《小乱声(こらんじよう)》(竜笛の独奏)-《新楽乱声》(竜笛の退吹(おめりぶき),左方舞人の舞)。二節では《高麗(こま)小乱声》(高麗笛の独奏)-《高麗乱声》(高麗笛の退吹,右方舞人の舞)。三節では,《新楽乱声》と《高麗乱声》を同時に奏し,左右の舞人が同時に舞う。これを〈合鉾(あわせぼこ)〉ともいう。
執筆者:加納 マリ
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…それはおそらく創作年代の差だけでなく,創作された地方の影響もあろうと思われる。乱声(らんじよう)という様式の曲に古楽乱声と新楽乱声があり,現在新楽乱声は《振鉾(えんぶ)》という儀式開始の舞楽に用いられる。【高橋 美都】。…
…上演の際はテンポの緩やかな平舞(あるいは文ノ舞)の一対から始め,しだいにテンポの速い武ノ舞,走舞へと進む。奉納舞楽など正式の催しでは,平舞の左・右一組の演舞に先立ち,《振鉾(えんぶ)》という儀礼的な舞を,左・右各一人ずつの舞人によって行う。また,すべての舞楽の最後には《長慶子(ちようげし)》という管絃の曲を管方が舞楽吹のスタイルで演奏し,会をしめくくる。…
※「振鉾」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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