雅楽の管絃・舞楽の曲名。唐楽,盤渉(ばんしき)調,一人舞。別名《採桑子》ともいう。番舞(つがいまい)は《新靺鞨(しんまか)》。高麗楽という説もある。舞は久しく絶えていたが,1962年復活上演された。老いた翁の面(能の翁を思わせる)をつけ,牟子(むし)という頭巾の後に笹の葉をさして白の直衣に紫の袍という《採桑老》用の装束を着る。下鞘(しもざや)と薬袋(やくたい)を腰に下げ,鳩杖をつき,係物(かかりもの)という介添人に助けられながら登場。百済の国の採桑翁が鳩杖をもち,老いた体で舞った姿をあらわしたものといい,介添人の肩にすがってようやく歩くという舞振りもある。日本には用明天皇(在位585-587)のときに大神公持が伝えたといわれている。舞楽のときは,調子(出手(ずるて))-当曲-詠-音取(ねとり)-当曲-詠-音取-当曲-上調子(入手(いるて))と奏され,詠の部分では,舞人が30歳から100歳まで人間の老いていく姿を10歳刻みに語る。また調子の所では《安摩》と同様,鹿婁(ろくろ)乱序を奏する。管絃の曲としては,延八拍子,拍子12の中曲である。
執筆者:加納 マリ
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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