盤渉(読み)バンシキ

デジタル大辞泉 「盤渉」の意味・読み・例文・類語

ばん‐しき【盤渉】

日本音楽十二律の一。基音壱越いちこつより九律高い音で、中国の十二律の南呂なんりょ洋楽のロ音にあたる。

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精選版 日本国語大辞典 「盤渉」の意味・読み・例文・類語

ばん‐しき【盤渉】

  1. 〘 名詞 〙 雅楽の十二律の一つ。また、五音の一つ。基音の壱越の音から一〇律めの音で、洋楽のロ音に近いという。また、六調子の中の盤渉調を略してもいう。
    1. [初出の実例]「五音 宮 一越、商 平、角 双、徴 黄調、羽 盤渉」(出典:拾芥抄(13‐14C)上)

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改訂新版 世界大百科事典 「盤渉」の意味・わかりやすい解説

盤渉 (ばんしき)

日本音楽の用語。(1)十二律の一つ。基音である壱越(いちこつ)の音から10律目の音で洋楽のロ音とほぼ同じ高さの音。雅楽でこの音を主音とする調子を盤渉調といい,六調子の一つで律呂に属するとされる。(2)能の用語。笛(能管)の曲の類型を表す用語で,各句が盤渉の孔で終わる指使いの曲を指す。ただしこれは絶対音高ではない。指孔の位置も流派により異なる。黄鐘(おうしき),双調(そうぢよう)に対して用いられる。
十二律 →六調子
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世界大百科事典(旧版)内の盤渉の言及

【五声】より

…すなわち,ニ・ホ・ト・イ・ロという音程関係を宮・商・角・徴・羽にあてはめたもので,中国の徴調の五声に相当し,同じ形が後に律の五声と呼んだものにみられる。つまり唐俗楽二十八調中,日本に伝来した調の主音は,壱越(いちこつ)(ニ),平調(ひようぢよう)(ホ),双調(そうぢよう)(ト),黄鐘(おうしき)(イ),盤渉(ばんしき)(ロ)の五つであり,壱越は唐の古律の太簇(たいそう)であるが,俗律の黄鐘(こうしよう)とも考えられたので,日本ではこれを基準音とみなし,これを宮として以下4声を順次並べて徴調の五声音程の新五声(徴・羽・宮・商・角を宮・商・角・徴・羽と呼びかえたもの)を生じた。そののち鎌倉時代の声明家の間でしばしば論争が行われたが,結局,五声を説く場合,雅楽でも声明でも(りよ)は中国理論のままの宮調型五声,は徴調型の五声を述べるのがならわしとなった。…

【能】より

…謡の伴奏の笛は,謡が拍子合であるか拍子不合であるかに関係なく,つねにアシライ吹キで,謡の拍に合わせて拍を刻んで吹くということがまったくない。笛のもう一つの楽型である調型は,各句の旋律がどの指使いの音に帰結するかによって定まる楽型で,これに黄鐘基調(おうしききちよう)と盤渉(ばんしき)基調がある。前者が広く用いられる基本的な調型で,後者は変化をもたせて音高を高くとる調型である。…

※「盤渉」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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