探査船「ちきゅう」(読み)たんさせん「ちきゅう」

知恵蔵の解説

探査船「ちきゅう」

国立研究開発法人海洋研究開発機構(JAMSTEC)が所有する海底の掘削・調査を行う探査船。総トン数約5万6千トン、高さ約70メートルの掘削やぐらを備えライザー掘削方式により水深2500メートルまでの海底を海底面下深度7000メートルまで掘り進む能力を有する。これにより、これまで人類が到達したことのないマントルや巨大地震発生域への大深度掘削が可能になった。
地球の半径は約6000キロメートルで、その表面は固体の岩石などからできた地殻で覆われている。地殻の下には、かんらん石を主成分とした組成が異なるマントルと呼ばれる層が深さ約2900キロメートルまで続く。マントルまで掘り進み、その構成物質を直接手に取って調べたいという、地球物理学の要請に応えるものとして「ちきゅう」が企画された。地殻の厚さは大陸では数十キロメートルになるが、海底では平均6キロメートルほどである。このため、マントルに到達するには海底での掘削が有利である。深海底の掘削は、1950年代後半から米国などで企画され、何度かの試みで一定の成果を得てきた。しかし、資金や技術的な問題からマントル到達には至らず、その後の世界各国による国際プロジェクトに引き継がれた。プロジェクトは日米が主導し、2005年には「ちきゅう」建造が完了、13年に始まる国際深海科学掘削計画(IODP)の主翼を担う探査船として活躍している。
「ちきゅう」が採用するライザー掘削方式では、船上と海底の間をライザーパイプでつなぐ。この中にドリルパイプを通して、鉱石粉末などを調合した特殊な泥水を送り込み海底を掘削する。ドリルビット(刃先)を冷却するために先端まで送られた泥水は還流し、ライザーパイプ内を上昇(ライズ)し、ビット付近の堀りくず、岩石破片などを船上で常時回収できる。このような2重の管構造の中を流れる泥水の調合を変え、地質の変化に合わせたり掘削穴内の圧力を調整したりすることで、大深度までの掘削が可能になる。ライザー掘削方式は、掘削物の漏出を防ぐことができるため、海底油田の掘削などに用いられるが、探査船としての採用は世界初である。これに対し、ドリルパイプだけで掘削するライザーレス掘削方式では、ドリルパイプに海水を送り込むだけで回収できないため、堀りくずは海底に押し出され、圧力調整もできないので掘削は海底面下深度1000~2000メートル程度までに制限される。その反面、短い期間で作業に着手でき、水深7000メートルの深海底でも掘削できる。「ちきゅう」はこの両方式を使い分けて掘削できる。掘削する先端の岩石を円柱形に切り出した地質資料(コア)を、船上に引き上げて回収するシステムにも独自のものが採用されている。また、掘削作業と並行して研究を進めるため、採取した資料を船上で処理・分析する研究区画を設け、世界初の船上搭載となるX線CTスキャンや、研究船としては唯一無二の磁気シールドルームなど、数々の最新鋭の設備・機器を擁する。
12年には日本海溝で、東北地方太平洋沖地震(11年)で破壊が伝搬したプレート境界断層に到達する大水深掘削を行い、地質資料の採取や温度センサーの設置に成功した。この掘削では、水深約6900メートル、海底面下深度約850メートルと、世界最長のドリルパイプ長を記録した。19年3月までには熊野灘で、史上最深となる海底5200メートルの掘削を行い、東南海地震を引き起こすプレート境界の岩石採取を試みる。

(金谷俊秀 ライター/2018年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

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