デジタル大辞泉 「方様」の意味・読み・例文・類語 かた‐ざま【方様】 《「かたさま」とも》1 方向。方角。「北の陣の―に歩み行くに」〈能因本枕・二四四〉2 方面。向き。その筋。「今は、かかる―の御調度どもをこそは、とおぼせば」〈源・賢木〉3 味方。身内。仲間。「前さきの右大将宗盛卿の―の人は」〈平家・三〉 かた‐さま【方様】 [代]二人称の人代名詞。女性が男性に対して軽い尊敬・親愛の情を込めて呼ぶ語。近世、多く遊女が用いた。あなたさま。「何とて―の外におもわくの男がござんしよぞ」〈難波鉦・四〉 出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例
精選版 日本国語大辞典 「方様」の意味・読み・例文・類語 かた‐ざま【方様】 〘 名詞 〙 ( 「かたさま」とも )① 方向。方角。[初出の実例]「北陣のかたさまにあゆみ行くに、あきたるやり戸もすぎねば」(出典:能因本枕(10C終)二四四)② その向き。その方面。その筋。[初出の実例]「これかれなどは『あないとほし』など、よわきかたざまにのみいふ」(出典:蜻蛉日記(974頃)中)「公忠の弁をば、おほかたのよにとりてもやむごとなきものにおぼしめしたりし中にも、鷹のかたざまには、いみじう興ぜさせ給ひしなり」(出典:大鏡(12C前)六)③ その人の側。その人の身内、味方。[初出の実例]「おのがかたざまに物いふ」(出典:落窪物語(10C後)一)「前右大将宗盛卿のかた様の人は、世は只今大将殿へまゐりなんずとぞ悦びける」(出典:平家物語(13C前)三) かた‐さま【方様】 〘 代名詞詞 〙 近世語。対称。女性から男性に対して敬愛の気持で呼ぶ語。[初出の実例]「かた様は覚えてか、過にし穐(あき)自(みづから)が黒髪をぬかせられ、猿などして遊びし夜は」(出典:浮世草子・好色一代男(1682)六)方様の語誌( 1 )もと、方向、方面を表わす名詞「かたざま(方様)」が、近世になって対称として用いられるようになったもの。遊女が客に対して用いる場合が多いが、女性をさす例も存在する。( 2 )「かたさま」に「お」の付いた「おかたさま」は、男性も用いた。 出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例