旅行業(読み)りょこうぎょう

共同通信ニュース用語解説 「旅行業」の解説

旅行業

旅行業法に基づき観光庁都道府県に登録した業者。4月現在で全国に9790ある。取り扱える業務の範囲に応じて第1種~第3種、地域限定に区分される。第3種は業者が目的地や日程、宿泊先を事前に決めるパック旅行を扱えなかったが、2019年の制度改正で、本社や営業所がある市町村や近隣地域に限って認められた。旅行者は代金を前払いするケースが多いため、登録には倒産に備えた営業保証金が求められ、第1種が最も高く設定されている。

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精選版 日本国語大辞典 「旅行業」の意味・読み・例文・類語

りょこう‐ぎょうリョカウゲフ【旅行業】

  1. 〘 名詞 〙 旅行者に対して、交通機関や宿泊の手配、旅先での案内などさまざまな便宜をはかって利益を得る事業。

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改訂新版 世界大百科事典 「旅行業」の意味・わかりやすい解説

旅行業 (りょこうぎょう)

旅行者と旅館・ホテルなどの宿泊施設,鉄道・航空会社などの運輸機関との間にあって,旅行者に対し予約,手配,斡旋などのサービスを提供し,報酬を得る事業。

 日本における旅行業の先駆者は平安末期ころから活躍したという熊野(和歌山県)の先達(せんだつ)である。彼らは熊野で修行を重ねた山伏で,里へ戻って加持祈禱を行いながら,熊野参詣の道案内を務めた。寺社への参詣を組織し,宿泊の世話をする御師(おし)は,中世~近世に伊勢や出羽三山などでも活躍した。しかし近代的な旅行業は,1905年,滋賀県の草津駅前で弁当屋をしていた南新助(1885-1972)が高野山と伊勢へそれぞれ参拝団(各100名前後)を組織したのが第1号で,南は08年には鉄道の運賃割引を利用して善光寺参詣の団体を募集し,900余名の参加者を得ている。これが現在の(株)日本旅行の創業といわれている。また外国人客誘致と接遇のために,これより先1893年にジャパン・ツーリスト・ビューローの前身といわれる喜賓会(きひんかい)Welcome Societyが設立され,これが現在の日本交通公社に引き継がれている。外国における近代的旅行業の創始者イギリスクックで,彼は1841年禁酒会の団体旅行を組織した。

 1952年に日本の旅行業者は500社を超え,旅客の誘致斡旋活動も活発になってきた。その反面,一部悪徳業者も現れ出したので,政府は旅客の保護と旅行斡旋事業の健全化をはかるため〈旅行あつ旋業法〉を制定し,業者の登録と運輸大臣による所要の監督を行うことになった。1950年代から60年代にかけての旅行の大衆化に伴い,旅行業者が各種の主催旅行を開発し,旅行需要を積極的に吸収する営業政策が顕著になったため,71年,これまでの取締法規的な法律から取引法規的性格をもつ改正〈旅行業法〉が制定された。旅行業は一般旅行業(日本人の国内・海外旅行,外国人の訪日旅行などすべての旅行営業ができる),国内旅行業(日本人・外国人の国内旅行のみが営業できる),旅行業代理店業(一般または国内旅行業者のために代理して契約を締結する)の三つに大別され,このうち,日本人の海外旅行の増大に伴い,一般旅行業者と一般旅行業代理店業者の伸びが著しい。82年1月現在,総旅行業者数は6761社に達し,総取扱額は約3兆円となっている。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「旅行業」の意味・わかりやすい解説

旅行業
りょこうぎょう
travel agent

旅行者と観光業者の間に立って双方の代理業務,旅行案内,団体旅行の設定など各種便宜をはかり,手数料などの報酬や運賃差額を収入としている事業。一般に旅行代理店と俗称され,観光需要の増大に伴って着実に発展してきた。大きなもののなかにはイギリスのトマス・クック・アンド・サン商会や日本の日本交通公社のように時刻表の発行を行うものや,また旅行小切手の発行,両替業務,外国の座席指定券の発売など国際的業務を行うものもある。社会主義国では旅行者の監督を行う必要から,旧ソ連のイン・ツーリスト,ブルガリアのバルカン・ツーリストなど,単一の大規模な国営旅行公社が存在する。日本では,旅行業法 (昭和 27年法律 239号) に基づく一般旅行業,国内旅行業,旅行業代理店業をいう。一般旅行業とは,旅行者を代理して,運送または宿泊およびその他の旅行に関するサービスを提供するものと契約の締結,媒介,取次ぎをする行為,逆にサービスを提供する側の代理人として旅行者相手に契約締結,媒介をする行為,他人の経営する運送機関または宿泊施設を利用して旅行者に運送または宿泊サービスを提供する行為,旅行者のために各種行政手続の代行や旅行案内をしたり相談に応じる行為を行うものをいい,これを国内の旅行だけについて扱うものを国内旅行業という。また一般旅行業,国内旅行業の代理をして契約を締結するものを旅行業代理店業という。旅行業を営むものは運輸大臣あるいは知事の行う登録審査を受けなければならず,また各営業所最低1人の旅行業取扱主任者 (国家試験による) の配置などが義務づけられている。一般・国内旅行業では,営業保証金の供託,料金・旅行約款についての登録行政庁の認可が必要である。現在,旅行業の経営規模は必ずしも大きくなく,特に代理店業の零細性が目立つ。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「旅行業」の意味・わかりやすい解説

旅行業
りょこうぎょう

旅行者と旅行手段を提供する事業者(交通機関、宿泊施設等)との間に位置して、旅行者に対しては旅行目的の達成と満足、事業者に対しては利潤をもたらすために、旅行ならびにそれに付随する各種のサービスを提供する事業。旅行業法(昭和27年法律第239号)によって、一般旅行業者、国内旅行業者、旅行業代理店業者の3種類に分けられていたが、1996年(平成8)施行の改正旅行業法において、旅行業者と旅行業者代理業者の2種類に簡素化された。旅行業者は、(1)第一種旅行業者(海外・国内の募集型企画旅行、受注型企画旅行、手配旅行など、すべての旅行契約を行う)、(2)第二種旅行業者(海外の募集型企画旅行を除く、旅行契約を行う)、(3)第三種旅行業者(海外・国内の募集型企画旅行を除く、旅行契約を行う)の3種類であり、旅行業者代理業者は、特定の旅行業者を代理した旅行商品の販売を行うことができる。

 旅行業の業務内容は、交通、宿泊機関などの斡旋(あっせん)代理業から、業者自らの手で旅行商品(パッケージ・ツアー)を企画・販売する企画商品の比重を高めてきたが、今後はさらに、地域開発支援や成熟した旅行者を育てるといった、持続可能な社会における交流文化を支援するような社会的役割が求められている。

[橋本俊哉]

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