1987年(昭和62)4月に日本国有鉄道(国鉄)が分割・民営化された際に、国鉄の清算業務を担当するために発足した特殊法人。1998年(平成10)10月、解散。日本国有鉄道清算事業団(略称国鉄清算事業団、以下、事業団と略記)発足時の旧国鉄債務総額は37兆1000億円であった。本州のJR3社等がこのうちの11兆6000億円あまりを負担し、残り25兆5000億円を事業団が引き継いだ。その時点の処理案は、国民負担13兆8000億円、土地売却7兆7000億円、株式売却1兆2000億円、新幹線鉄道保有機構(1991年解散)負担2兆9000億円となっていた。
事業団は債務返済のため、所有土地の売却やJR株式の一部売却を行って約15億円の収入を得た。しかしいわゆるバブル経済期には地価高騰をあおる恐れがあるとして、閣議決定により用地の売却が凍結されたり、高い利子負担が解消できなかったりして、国鉄長期債務等残額は約28兆円に膨れあがり(1997年度末時点)、債務償還は実質的には進まなかった。
事業団のいま一つの業務に、旧国鉄職員の再就職の促進があった。国鉄が115年の歴史を閉じた時点で、国鉄職員は27万7000人いた。このうちの約20万人はJR各社等に新規採用された。この時点で国鉄を去っていった職員もあったが、再就職先未定者約7600人を含む約2万4000人が事業団に移された。事業団は再就職対策を実施したが、1990年(平成2)4月に「現地、現職採用」などを求めた国鉄労働組合(国労)組合員ら1047名を解雇し、この業務を打ち切っている。
債務残高が増加し続けているにもかかわらず、残る保有資産は減少し、事業団が自主財源によってその債務を償還するめどがたたなくなったため、政府は債務の処理方策を策定し、1998年秋に「旧国鉄債務処理法案」(日本国有鉄道清算事業団の債務等の処理に関する法律)を国会提出した。これは総額28兆3000億円の旧国鉄長期債務のうち、24兆2000億円(事業団解散時における有利子無利子債務の合計)を国が引き継ぎ、その金利支払いには、たばこ特別税新設や郵便貯金特別会計から繰り入れるとし、また年金負担額不足分をJR本州3社に追加負担を求めるなどの内容であった。JRなどの反対があったが、困難の末10月に成立し、1998年10月に事業団は解散、残余の土地とJR株式は日本鉄道建設公団(現鉄道建設・運輸施設整備支援機構)が引き継ぎ、職員の多くも公団に移って土地売却を続けることとなった。
[土居靖範]
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