自衛隊と米軍との間で、必要な物品と役務(サービス)を相互に提供しあえるように定めた協定。協定の英語名Acquisition and Cross-Servicing Agreementを略して「ACSA(アクサ)」ともよぶ。
同種の協定には、1980年(昭和55)にアメリカ合衆国議会で制定された「NATO(北大西洋条約機構)相互支援法」に基づきアメリカが82年から87年にかけてNATO諸国と締結したものがある。86年に同法が改正されNATO以外の国とも締結できるようになり、88年からはイスラエル、韓国などと協定を締結し、同年から日本にも締結を求めていた。
日本政府は、日米安全保障条約の見直し、すなわちアメリカ合衆国政府との「日米安保再定義」の協議の結果の一つとして、1996年(平成8)4月15日に日米物品役務相互提供協定を締結した。同協定は同年6月28日に公布され、10月22日に発効となった。協定で自衛隊と米軍が相互に提供しあう「物品」とは、食料、水、燃料・油脂・潤滑油、被服、部品・構成品であり、「役務」(サービス)とは、宿泊、輸送(空輸を含む)、通信、衛生業務、基地支援、保管、施設の利用、訓練業務、修理・整備、空港・港湾業務である。このときの協定の適応対象は、日米共同訓練、国連平和維持活動または人道的な国際救難活動に限定されていた。
しかし、1997年9月に「日米防衛協力のための指針」(日米新ガイドライン)が合意され、そこで「周辺事態」に際しても自衛隊が米軍に対して「協力」することが規定されたのに伴い、同協定の適応対象を「周辺事態に対応する活動」にも拡大することとなった。98年4月28日にこのための改正協定が調印され、翌99年5月24日には「周辺事態法」「自衛隊法の一部を改正する法律」とともに国会で承認された。改正協定は同年6月2日に公布され、9月24日に実施手続の細目を定めた「実施取決め」に統合幕僚会議議長藤縄祐爾(ゆうじ)と在日米軍司令官ヘスターが調印、翌25日に発効となった。これにより、「周辺事態」に際しても自衛隊と米軍の間で物品・役務が相互に提供できることになった。ただし、この際には自衛隊による武器・弾薬の提供は含まれないと明記していた。NATO諸国との協定のなかには「戦時」の適用が明記されているものもあるが、日米間の協定にはそれが明記されていなかった。このことは「日本有事」の際の「有事法制」が未整備であることと関連していたが、2004年6月に成立した「米軍行動円滑化法」等により法的に整備され、自衛隊が保有する弾薬等を米軍に提供することができるようになっている。
この協定によって、自衛隊と米軍による日米共同作戦行動はいっそう緊密に強化されたといえよう。
[松尾高志]
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