日本大百科全書(ニッポニカ) 「米軍行動円滑化法」の意味・わかりやすい解説
米軍行動円滑化法
べいぐんこうどうえんかつかほう
正式名称は「武力攻撃事態等におけるアメリカ合衆国の軍隊の行動に伴い我が国が実施する措置に関する法律」。平成16年法律第113号。いわゆる有事法制の「個別法」の一つとして、他の関連7法と同時に2004年(平成16)6月14日に成立し、6月18日に公布された。
この法律の目的は武力攻撃予測事態および武力攻撃事態において、自衛隊と共同作戦を実施する米軍が我が国内にあって作戦行動する際に、自衛隊と同様の措置をとることができるように国内法的な保証を与えるものである。
具体的にはまず米軍の行動またはそのための指定行政機関による行動関連措置の実施が地方自治体の実施する対処措置に影響を及ぼすおそれがあるときには、政府として、関係する地方自治体との連絡調整を行う。また武力攻撃事態にあって、米軍から応急措置としての道路の工事にかかわる連絡を受けた場合に、防衛大臣は自衛隊法の規定に準じて通知する。さらに自衛隊が保有する物品(弾薬を含む)を米軍に提供することができ、また防衛出動を命じられた自衛隊は米軍に役務の提供を実施することができる。なお防衛出動待機命令下の自衛隊の場合も内閣総理大臣の承認を得れば、防衛大臣が自衛隊に米軍に対する役務の提供を命じることができる(この場合、この任務にあたる自衛官は、その職務を行うに際して、自己または自己の管理の下に入った者の生命等の防護のため武器の使用ができる)。この物品・役務には次のものが含まれる――補給(武器の提供を行う補給を除く)、輸送、修理もしくは整備、医療、通信、空港もしくは港湾に関する業務、基地に関する業務、宿泊、保管、施設の利用または訓練に関する業務(これらの業務にそれぞれ附帯する業務を含む)。最後に、米軍が武力攻撃事態の際に、土地または家屋を緊急に必要とする場合は、内閣総理大臣は期間を定めて当該土地または家屋を使用することができ、この際に立ち入り検査を拒んだ者等に対しては罰則を科すことができる。
[松尾高志]
『内外出版編、西修監修『詳解有事法制――国民保護法を中心に』(2004・内外出版)』