旭化成(読み)あさひかせい(英語表記)Asahi Kasei Corporation

改訂新版 世界大百科事典 「旭化成」の意味・わかりやすい解説

旭化成[株] (あさひかせい)

繊維メーカーから成長した総合化学会社。本社は大阪市北区と東京都千代田区,主力工場延岡市。日本窒素肥料(現,チッソ)の野口遵が1922年5月,ビスコースレーヨンの生産を行う旭絹織(株)を設立したことに始まる。また野口はイタリアのカザレー式アンモニア合成法を導入して日窒肥料(株)延岡アンモニア工場を建設,23年試運転に成功した。29年にはドイツのベンベルグ社から技術導入して銅アンモニア絹糸製造の日本ベンベルグ絹糸(株)を設立,延岡工場(原料として同工場のアンモニアを利用することを想定)に隣接して工場を建設,31年に製造を開始した。

 31年,日窒肥料延岡工場を分離して延岡アンモニア絹糸(株)を設立(旭化成の直接の前身),33年に旭絹織と日本ベンベルグ絹糸を合併して旭ベンベルグ絹糸(株)と改称,一大レーヨン会社になった。43年には日本窒素火薬(株)(1930年活発な火薬需要に対応して延岡郊外に設立)を合併,繊維,薬品,プラスチック等の主要部門を一本化社名を日窒化学工業(株)とした。第2次大戦後は,46年,財閥解体で日窒(日窒コンツェルン傘下から離れ旭化成工業に改称,労働争議の解決を図るかたわら,空襲によって破壊された工場の復旧に努めた。60年には自社技術によってアクリル繊維カシミロンの生産を始め,合繊メーカーの仲間入りをした。さらに,ナイロンの生産も始めるとともに,合成ゴムや建材・住宅部門にも事業を拡大。また,70年前後に水島三菱化成工業等との共同出資で石油化学基地を建設(水島コンビナート),石油化学分野にも進出し,総合化学会社としての地位を確立した。このほか,医薬品や食品(グルタミン酸ソーダなど)の生産にも携わっており,合繊メーカーの中でもとくに多角化が進んでいる。82年には旭ダウ(株)(1952年アメリカのダウ社と折半出資で設立,商品名サランラップで著名)を合併し,石油化学部門の立直し・強化を図っている。ウラン濃縮技術の開発も進めている。住宅・建材部門の比重も大きい。2001年1月現社名となる。資本金1034億円(2005年9月),売上高1兆3777億円(2005年3月期)。
化学工業
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「旭化成」の意味・わかりやすい解説

旭化成
あさひかせい
Asahi Kasei Corporation

繊維,石油化学製品,電子部品・材料,医薬・医療,住宅・建材などの事業会社を傘下に収める持株会社。1931年延岡アンモニア絹絲として旭絹織(1922創業)から独立,1933年旭絹織,日本ベンベルグ絹絲を合併して旭ベンベルグ絹絲と改称。1943年日本窒素火薬を合併して日窒化学工業と改称。1946年旭化成工業に改称。1951年新日本化学工業設立,1952年旭ダウ設立などにより総合石油化学工業に発展。1972年岡山県倉敷市水島地区でエチレン 30万t規模のナフサ分解工場の運転を開始。また 1972年に本格販売を開始した「ヘーベルハウス」に代表される住宅部門においても業界大手に成長。医薬・電子材料・新素材などの技術開発も展開し,多角化を進めた。2001年現社名に改称。2003年持株会社に移行,会社分割により旭化成せんい,旭化成ケミカルズなどの分社を設立し,事業を承継した。

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日本の企業がわかる事典2014-2015 「旭化成」の解説

旭化成

正式社名「旭化成株式会社」。英文社名「ASAHI KASEI CORPORATION」。化学工業。大正11年(1922)前身の「旭絹織株式会社」設立。昭和6年(1931)「延岡アンモニア絹絲株式会社」設立。「旭ベンベルグ絹絲株式会社」「旭化成工業株式会社」を経て平成13年(2001)現在の社名に変更。同15年(2003)分社・持株会社化。東京本社は東京都千代田区神田神保町。大阪本社は大阪市北区中之島。旧日本窒素系。住宅・化学品・繊維・医療・建材などの事業会社を傘下に置く。東京証券取引所第1部上場。証券コード3407。

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世界大百科事典(旧版)内の旭化成の言及

【化学繊維】より


[第1次大戦後]
 第1次大戦後,外国品の輸入が再開されるや,糸質の優れた輸入糸との競争にあって帝人の人絹糸生産も危機に立たされたが,帝人は久村の2回にわたる外国視察を通じての外国技術の吸収によってこれを打開し,親会社鈴木商店の資金援助をも得て工場規模を急速に拡大した。一方レーヨン糸の用途は,第1次大戦後には組紐から肩掛け,傘地を経て女物の帯地へとしだいに拡大し,22年には,その将来性に着目した日本窒素肥料(日窒)の野口遵が日本綿花の喜多又蔵と協力して資本金100万円(全額払込み)の旭絹織(現,旭化成工業)を設立した。同社は,レーヨン糸メーカーとして国際的に著名なドイツのグランツシュタック社から技術を導入するとともに,資本的にも提携した。…

※「旭化成」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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