日本たばこ産業(読み)にほんたばこさんぎょう

日本大百科全書(ニッポニカ) 「日本たばこ産業」の意味・わかりやすい解説

日本たばこ産業(株)
にほんたばこさんぎょう

日本専売公社が、1984年(昭和59)8月に成立した「たばこ事業法」など、いわゆる専売改革関連五法によって民営化されることとなり、85年4月1日から新発足した特殊会社略称JT。前身である日本専売公社は、1948年12月公布の「日本専売公社法」により、翌49年6月に設立された全額政府出資の公法上の法人で、「たばこ専売法」「塩専売法」に基づき、財政専売としてのたばこ専売事業および公益専売としての塩専売事業を営んできた。民営化の背景には、1982年7月の臨時行政調査会の第三次答申が、行政の簡素化・効率化の一つとして民営化を勧告していたこと、諸外国とくにアメリカから経済摩擦解消の一環としてたばこ市場開放の要請が強まったこと、などがある。

 日本たばこ産業株式会社は、専売改革関連五法の一つ「日本たばこ産業株式会社法」に基づいて運営されている。設立に際しては、日本のたばこ産業の中心的役割を果たすべき主体として、その健全な発展に資することを担保するために、政府が株式を常時2分の1以上所有することとされ、さらに附則により政府保有割合は当分の間3分の2以上とされた。1996年(平成8)6月の第二次売り出しにより、発行済株式総数200万株(資本金1000億円、額面1株5万円)のうち産業投資特別会計が2分の1にあたる100万株を、国債整理基金特別会計が6分の1の33万3333株を保有し、3分の1にあたる66万6666株は政府保有義務の及ばない株式として放出が完了した。

 おもな事業内容は、国内における製造権を独占しているたばこ事業であり、当分の間、塩専売法に基づいて塩専売事業も行うとされていたが、1997年4月1日の塩事業法の実施に伴い塩専売法は廃止され、90年にわたる塩専売制度は幕を閉じた。

 日本たばこ産業株式会社は日本では唯一のたばこメーカー、販売業者(輸入たばこの販売)であり、世界で第3位の市場占有率を占めている。1985年の株式会社化に伴い、たばこ事業以外の事業にも進出することが可能となり、医薬、食品を中心に、農業、不動産事業などにも取り組み、国際化、多角化を目ざしている。

 1996年までの売上高総額2兆8042億円のうち、塩専売事業からの売上高は690億円であり2.46%を占めていたが、1997年からは塩専売事業からの売上高はなくなった。2008年3月期の売上高は2兆3027億円、社員数は2008年3月31日現在で8999人に上る。

[林 正寿]

『前屋毅著『知られざるJT(日本たばこ産業)の底力』(1994・実業之日本社)』

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百科事典マイペディア 「日本たばこ産業」の意味・わかりやすい解説

日本たばこ産業[株]【にほんたばこさんぎょう】

日本専売公社タバコ専売の廃止により民営化され,1985年に設立された特殊法人。略称JT。国内におけるタバコ製造を独占し,塩の専売事業も継承したが,塩専売は1996年度限りで廃止された。1999年にRJRナビスコ社より米国以外の全海外たばこ事業を取得し,世界第3位のたばこ会社に。2007年には世界5位の英ギャラハーを総額約75億ポンドで買収した。海外でのたばこ事業を拡大すると同時に,医療,食品などへ多角化を図っている。本社東京,工場北関東(栃木),関西(京都)ほか計14。2011年資本金1000億円,2011年3月期売上高6兆1945億円。2011年3月期売上構成(%)は,国内たばこ42,海外たばこ41,医薬2,食品15。海外売上比率43%。
→関連項目旭化成[株]国家公務員共済組合三公社五現業専売制度タバコ(煙草)タバコ製造業抑煙タバコ

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改訂新版 世界大百科事典 「日本たばこ産業」の意味・わかりやすい解説

日本たばこ産業[株] (にほんたばこさんぎょう)

日本専売公社が,1984年8月に成立した日本たばこ産業株式会社法など,いわゆる専売関連5法によって民営化された,タバコの製造を独占する特殊会社。略称JT。そのほか塩専売事業も行う。民営化の背景には,(1)日本は大きなタバコ市場(1995年度実績で3000億本以上)をもっているにもかかわらず,タバコの専売制度により市場が閉鎖的であったため,日米経済摩擦解消の一環として市場開放の要請が強まっていたこと,(2)臨時行政調査会による基本答申(1982年7月)を受けて,行政の簡素化,効率化の一つとして民営化の方針が出されていたこと,などによる。94年株式上場。資本金1000億円(2005年9月),売上高4兆6645億円(2005年3月期)。
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知恵蔵mini 「日本たばこ産業」の解説

日本たばこ産業

日本たばこ産業株式会社。タバコを中心に医薬品・食品などを製造・販売する日本の特殊会社(本社・東京都港区)。略称はJT。2014年3月31日現在、資本金1000億円、従業員数はJT単体で8774人。タバコ・塩を独占販売していた特殊法人「日本専売公社」から業務を継承し、1985年4月に創設された。88年10月、コミュニケーション・ネーム「JT」を導入。93年9月には医薬総合研究所を設置した。94年10月、東京、大阪、名古屋の各証券取引所市場第一部に株式を上場。97年4月、塩の専売制度廃止に伴い塩専売事業が終了した。98年4月には株式会社ユニマットコーポレーションと契約し清涼飲料事業に乗り出し、清涼飲料水「桃の天然水」や缶コーヒー「ルーツ」など多数を売り出してきたが、15年2月4日、同社は飲料事業から同年9月末をめどに撤退することを発表した。

(2015-2-6)

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「日本たばこ産業」の意味・わかりやすい解説

日本たばこ産業
にほんたばこさんぎょう

国営独占企業,日本専売公社から改組され,1985年4月に民営化されたたばこ製造の独占権をもつ会社。 JTと略称する。 1994年 10月株式上場。主力のたばこ事業のほか,専売公社時代からの研究開発力や販売ネットワークを利用して医薬品,食品,不動産事業など,経営の多角化を目指している。

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世界大百科事典(旧版)内の日本たばこ産業の言及

【専売】より

…また,アヘンについても,法律上専売の語は用いられていないが,国の独占権が定められており,実質的には専売であるといってよい。現在,塩の専売は日本たばこ産業株式会社にゆだねられている一方,アルコールの専売は通商産業省の所管で,その経理はアルコール専売事業特別会計で行われている。また,アヘンについては厚生省の所管であり,その経理はあへん特別会計によって行われている。…

【タバコ(煙草)】より

…バーレー種は東北地方で生産され,アメリカン・ブレンド製品の原料となっている。 日本の葉タバコ生産は,1898年より葉タバコ専売制度のもとにおかれていたが,1985年4月より専売制度が廃止され,特殊会社(日本たばこ産業(株))と契約して栽培することとなった。国際競争時代に向けて今後の課題として,労働時間の短縮と規模拡大による低コスト生産,および主産地形成,品質の向上が叫ばれている。…

【日本専売公社】より

…一方,同年度の塩の売上高は948億円で,売上構成はタバコ96%に対して塩4%の割合となっていた。
[民営化]
 中曾根康弘内閣の行政改革の一環として,タバコ事業の民営化が進められ,84年8月,〈たばこ事業法〉〈日本たばこ産業株式会社法〉〈塩専売法〉〈たばこ消費税法〉など,いわゆる専売改革5法案が公布され,85年4月からタバコ専売制度は廃止され,タバコの輸入・販売が自由化された。同公社は,特殊会社日本たばこ産業株式会社となり,タバコ製造のみを独占する。…

※「日本たばこ産業」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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