戯曲を舞台形象化するいっさいの仕事を創造、統一するのが演出者であり、それを舞台に展開させる演出代行の責任者が舞台監督である。公演前の舞台監督の仕事は、舞台美術、照明、音響などの各デザイナーを統括し、演出プランの実際的な立案を行う。またスタッフ会議を招集し、演出プランの理解を徹底させ、その練り上げを行う。演出者としての仕事は舞台稽古(けいこ)までで終わり、公演当日からの全責任は舞台監督の手に移る。それゆえ舞台監督は、演出者の単なる従属者ではなく、あくまでも独自の権限をもち、出演者とスタッフの監督業務を行うと同時に、公演の舞台進行をつかさどる公演中の最高責任者である。日本の新劇運動では当初演出者のことを舞台監督とよんでいたが、1924年(大正13)築地小劇場創立以降、演出と舞台監督の機能が明確になっていった。
[大木 靖]
『水品春樹著『舞台監督の仕事』(1958・未来社)』
演劇用語。公演準備中は演出家(演出)の創造活動を実務的に補佐して稽古に立ち会い,装置・照明など各スタッフのまとめ役となり,公演初日以降は演出家の意図を体現して舞台上および舞台裏の進行いっさいを監督する職能。元来,欧米では劇場付の職能であった。近代日本では直接的に舞台表現に関与する〈ステージ・ディレクター(演出家)stage director〉と主として実務面に関与する〈ステージ・マネージャーstage manager〉の区別があいまいで,明治末期から大正期にかけて演出家を舞台監督と称したこともあった。そして大正末期の築地小劇場以降,演出家と舞台監督との職能が明確に区別され,築地小劇場からは水品春樹(みずしなはるき)のような専門家も生まれている。
執筆者:石沢 秀二
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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