日本大百科全書(ニッポニカ) 「スタジオ・システム」の意味・わかりやすい解説
スタジオ・システム
すたじおしすてむ
studio system
1920年代に確立されたハリウッド独特の製作方式。その礎(いしずえ)となったのは1910年代にトーマス・H・インスThomas Harper Ince(1882―1924)が築きあげたプロデューサー・システムである。これは製作総責任者が脚本から演出、編集までの製作工程全体を掌握、統括する製作体制をさし、製作の分業化および製作各部門における作業内容の徹底した特化を促すものだった。大手撮影所はこうした製作方式を土台にして製作事業の拡充を図るとともに、しだいに配給や興行にも触手を伸ばし、映画という自社製品について生産から販売まで自らが統括、指揮する体制を整えていった。広義にはこうした流通方式も含めてスタジオ・システムとよぶ。スタジオ・システムの確立に伴い、映画産業の寡占化も進行していった。大手スタジオが製作・配給・興行の一括支配を目ざしたためである。この結果、1930年代になって、MGM、パラマウント、20世紀フォックス、ワーナー・ブラザース、コロンビア、ユニバーサル、RKO、ユナイテッド・アーティスツからなる、いわゆる8大メジャーの時代が到来した。しかし戦後、メジャーは反トラスト法違反に問われ、弱体化が始まる。ついでテレビの普及、製作費の安価なヨーロッパ映画の台頭などがその後退に拍車をかけ、これに伴い、黄金期のスタジオ・システムも衰退していった。その後、メジャーはコングロマリットに属し、映画はその一部門として製作されるようになった。1990年以降、ハリウッドはユニバーサル、パラマウント、ワーナー・ブラザース、ウォルト・ディズニー、ソニーの5大メジャーの時代になっている。
[奥村 賢 2022年6月22日]